空き家になった実家を放置すると何が起きるか

空き家になった実家を放置すると何が起きるか 親と実家

実家の母屋は、今は誰も住んでいない。

母は離れで一人暮らしをしている。母屋は年に数回の法事や、荷物の確認で使うくらいになった。以前は母が時々母屋の風を通してくれていたが、体力が落ちてきて、その回数も減ってきた。今は私が月に数回訪ねたときに、窓を開けたり、雨漏りがないか見たりしている。

それでも、生活の場ではない。

以前、近所の空き家が傷んでいるのを見て、空き家リスクを自分ごととして考え始めた。今回はもう少し具体的に、空き家になった実家を放置すると何が起きるのかを整理しておきたい。

「いつか考える」では、少しずつ遅れていく問題だからだ。


空き家は、急に悪くなるわけではない

空き家の怖さは、一日で大きく変わることではない。

昨日まで普通に立っていた家が、翌朝突然だめになる。そういうことは、災害でもない限り少ないと思う。

むしろ、少しずつ進む。

窓を閉めたままになり、湿気がこもる。

雨どいに落ち葉がたまる。

庭木が伸びる。

床の一部がふわつく。

壁紙が浮く。

雨のあと、天井に小さな染みが出る。

こうした変化は、一つひとつは小さい。だから、見てもすぐに大ごとだとは思わない。今度でいい、次に来たときに見よう、となる。

私の実家の母屋も、今すぐ倒れそうな状態ではない。だから余計に判断が難しい。ただ、傷みははっきり進んでいる。雨漏りのような致命的な症状はまだ出ていないが、近くで見れば、外壁や建具のあちこちに年月が出ている。母が離れで暮らしているので、母屋そのものに毎日の生活はない。

この「まだ大丈夫」が、空き家では長く続く。

だが、人が住まない家は、生活の中で自然に行われていた管理が止まる。毎日窓を開ける。水を流す。掃除をする。異変に気づく。そういう小さな手入れがなくなる。

家は、人が住まなくなると静かに傷んでいく。

空き家を放置するというのは、何もしないことではない。傷みが進む時間をそのまま許すことでもある。

建物の傷みは、後から費用になって返ってくる

空き家になった実家の雨どいや外壁に出る小さな傷み

空き家を放置して最初に出てくるのは、建物そのものの傷みだと思う。

屋根、雨どい、外壁、床下、柱、水回り。普段見えないところから少しずつ劣化する。

雨漏りは特に怖い。

天井に染みが見えたときには、すでに屋根や下地に傷みが出ていることもある。雨が入れば、木材が傷む。湿気がこもれば、カビも出る。床や壁にも影響する。

私の実家の母屋は、木造二階建てで広い。父が大工だったこともあり、建物そのものには思い入れがある。だから、簡単に壊すという言葉を出しにくい。

それでも、台風や地震のたびに、あの家は大丈夫だっただろうかと気になるようになった。大きく報じられる災害でなくても、強い風や揺れがあると、次に行って確かめるまで落ち着かない。傷みが進んだ家は、こちらの不安も少しずつ増やしていく。

ただ、思い入れがある建物ほど、傷んだ姿を見るのはつらい。

父が手を入れた家を、管理しきれないまま傷ませていくことが、本当に大切にしていることなのか。最近はそう考えるようになった。

修繕するにしても、早いうちなら小さな工事で済むかもしれない。だが、放置して傷みが広がれば、工事費は大きくなる。雨どいの交換で済んだものが、屋根や外壁の修繕になる。床の一部で済んだものが、部屋全体の補修になる。

使う予定がない家に、どこまで修繕費をかけるのか。

ここが難しい。

住む予定があるなら直す意味がある。貸す予定があるなら、直して収益につなげる考え方もある。だが、住む予定も貸す予定もないまま修繕だけを続けるのは、家計にとって重い。

かといって、何もしなければ、いずれ解体費や近隣対応の費用として返ってくる。

空き家の放置は、費用を消すのではなく、先へ送るだけなのだと思う。

庭と外まわりは、近所に見える

空き家の庭木や垣根が道路側へ伸びて近所に見える様子

建物の中の傷みは、家族が見に行かなければ分からない。

しかし、庭や外まわりは近所から見える。

草が伸びる。

庭木の枝が道路や隣地に出る。

雨どいが外れかける。

瓦や外壁の一部が落ちそうになる。

郵便受けにチラシがたまる。

こうなると、空き家は「家族の問題」だけではなくなる。

近所の人にとっては、毎日目に入るものだ。風の強い日に枝が揺れる。台風のあとに何か飛んでこないか心配になる。草が伸びれば虫も気になる。道にはみ出せば通行の邪魔にもなる。

田舎の実家では、近所との距離が近い。

昔から知っている人もいる。父や母のことを知っている人もいる。だからこそ、迷惑をかけたくない気持ちがある。

私が月に数回実家へ行くと、母の買い物や生活の確認に加えて、母屋の様子も見る。庭や大工小屋のまわりも気になる。だが、限られた時間で全部を見るのは難しい。

中でも、庭木、草、垣根の手入れには、今の私が一番手を取られている。

草刈りだけでも、季節によっては追いつかない。夏は特に早く、前に刈ったはずなのに、次に行くとまた伸びている。庭木は枝を伸ばし、垣根も手を入れずにいると形が崩れて、道や隣地にはみ出していく。限られた訪問の時間で、外まわり全体に手を回すのは難しい。

今は何とか続けているが、年を重ねれば、同じようにはできなくなる。だからこそ、外まわりをどう保つかは、早めに考えておきたい。

空き家の外まわりは、放置するとすぐ周囲に伝わる。

誰も住んでいないことが分かる。管理が薄くなっていることも分かる。それは防犯上もよくない。

家の中より先に、外から崩れていく。そう思っておいた方がいい。

防犯と火災の不安も出てくる

空き家を放置すると、防犯面の不安も出てくる。

長く人が出入りしていない家は、外から見ても分かる。郵便物がたまる。庭が荒れる。雨戸が閉まったままになる。夜に明かりがつかない。

そうなると、侵入や不法投棄の対象になる可能性がある。

もちろん、すぐに何かが起きるとは限らない。私の実家も、今のところ大きな問題が起きているわけではない。

ただ、起きてからでは遅いことがある。

空き家に誰かが入り込む。物を置いていく。窓を壊される。火の不始末や放火の心配が出る。

こうしたことは、考え始めると不安ばかり大きくなる。だからといって、見ないことにもできない。

母屋には、まだ荷物が残っている。大工小屋には父の道具もある。古い農機具や、祖母の代からのものも残っている。人から見れば価値がないものでも、そこに物がある以上、管理の対象になる。

火災保険のことも考えなければならない。

今の実家の使い方に対して、保険の内容が合っているのか。空き家に近い状態で、どこまで補償されるのか。母屋と離れで契約がどう分かれているのか。

以前、親の保険を整理したときにも感じたが、保険は入っているだけでは足りない。いざというときに、今の状態で使える内容になっているかを確認する必要がある。

空き家の放置は、建物だけでなく、防犯、火災、保険の問題にもつながっていく。

管理不全空家や特定空家になる前に見る

空き家について調べると、空家等対策特別措置法という制度に行き当たる。以前この問題を考えたときには「特定空家」までを知っていたが、最近はその手前の段階も加わっていた。

国土交通省の情報を見ると、2023年12月13日に改正法が施行され、従来の特定空家だけでなく、管理不全空家という考え方も出てきている。

特定空家は、倒壊の危険や衛生上の問題、景観を著しく損なう状態など、周囲に大きな影響を及ぼす空き家だと理解している。

管理不全空家は、その手前の段階にある空き家として扱われる。放置すれば特定空家になりそうな状態で、自治体から指導や勧告の対象になることがある。

ここで気をつけたいのは、固定資産税の住宅用地特例だ。

住宅が建っている土地は、一定の条件で固定資産税が軽減されている。だが、管理不全空家や特定空家として勧告を受けると、その特例が受けられなくなる場合がある。

つまり、古い家を残しておけば税金が安い、とは言い切れない。

管理しないまま残していると、かえって税負担が増える可能性がある。

制度の細かな判断は自治体によるので、自分の家がどう扱われるかは市区町村に確認する必要がある。だが、少なくとも「空き家を放置しても、税金面では得」という単純な話ではなくなっている。

私の実家の母屋が、今すぐその対象になるとは思っていない。

しかし、十年後は分からない。

自分が今と同じ頻度で通えるかも分からない。母がいなくなったあと、実家へ行く理由が減れば、管理の間隔も空くかもしれない。そうなれば、状態の変化に気づくのも遅れる。

管理不全空家や特定空家という言葉は、遠い制度の話ではない。

放置した先にある現実として、今のうちから知っておきたい。

参考にした公式情報:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html

名義と相続を放置すると、動かせなくなる

空き家を放置すると、建物だけでなく書類の問題も重くなる。

誰の名義なのか。

相続登記は済んでいるのか。

固定資産税の通知には、どの土地と建物が載っているのか。

農地や調整区域の土地が混ざっていないか。

こうしたことが分からないまま時間が過ぎると、いざ売る、貸す、壊すという段階で動けなくなる。

私の実家にも、場所や面積をきちんと把握できていなかった小さな農地がある。調整区域で売買しにくい土地もある。価値があるかどうかに関係なく、所有している以上、管理や手続きの問題は残る。

相続登記についても、2024年4月1日から義務化された。

これは、実家問題を考えるうえで大きい。名義が古いまま残っていると、次の世代になるほど関係者が増え、話し合いが難しくなる。書類を集める手間も増える。

空き家は、建物が古くなるだけではない。

権利関係も、時間とともにほどきにくくなる。

親が元気なうちに、固定資産税の通知を確認する。登記簿を取る。権利書や登記識別情報の有無を確認する。土地の場所を地図で見る。

そこまでやって初めて、実家をどうするかの話が始まる。

私自身、まだ十分にできているわけではない。だからこそ、放置の怖さを感じている。

建物の傷みは目に見える。

だが、名義や相続の放置は目に見えにくい。

そして、目に見えにくい分、後から大きな手間になって出てくる。

参考にした公式情報:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

放置しないために、まず記録する

空き家の状態写真と書類を机に並べて記録する様子

空き家を放置しないと言っても、すぐに売却や解体を決められるわけではない。

私の実家の場合、母はまだ離れで暮らしている。母屋には仏壇もあり、年に数回お坊さんに来ていただく。父が使っていた大工小屋も残っている。

売る、貸す、壊す。

どれも簡単には決められない。

だから、今できることは記録だと思っている。

外壁の写真を撮る。

屋根や雨どいを見る。

庭木の状態を残す。

部屋ごとの荷物量を確認する。

水回り、電気、床、天井の状態を見る。

固定資産税の通知を保管する。

登記や保険の書類を一か所にまとめる。

写真やメモがあれば、次に見たときに変化が分かる。半年前と比べて草がどう伸びたか。雨染みが広がっていないか。外壁の傷みが進んでいないか。

感覚だけだと、「前からこんな感じだった」と思ってしまう。

記録があれば、変化を見られる。

業者に相談するときにも、写真があると話が早い。遠方の子どもに説明するときにも、言葉だけより伝わりやすい。将来、解体や売却を考えるときにも、今の状態を残しておくことには意味がある。

空き家対策というと、大きな決断を想像してしまう。

しかし、最初の一歩は、写真を撮ることや書類を集めることでもいい。

それなら、次の訪問でもできる。

実家を放置しないことは、次の世代への整理でもある

空き家になった実家を放置すると、建物が傷む。庭が荒れる。近所に迷惑をかける。防犯や火災の不安が増える。管理不全空家や特定空家、固定資産税の問題も出てくる。名義や相続も複雑になる。

並べてみると、気が重くなる。

ただ、これは不安を増やすために考えることではない。

自分が動けるうちに、問題を小さく分けるために考えることだと思っている。

母屋を売るのか、貸すのか、壊すのか。その最終的な答えは、まだ出ていない。母の暮らしもある。仏壇や墓の問題もある。父が残した道具もある。地域との関係もある。

ただ、一つだけ決めていることがある。この実家は、私の代で整理する。次の世代へ先送りはしない。

放置だけはしたくない。

放置すると、判断する人が変わる。今は私が考えている問題が、いずれ子どもに渡るかもしれない。子どもは遠方で暮らしており、実家に戻る予定はない。実家の土地や建物を当然に背負わせるつもりもない。

だから、私の代で少なくとも見える形にはしておきたい。

状態を記録する。

名義を確認する。

費用の目安を知る。

近所に迷惑をかけない範囲で管理する。

売る、貸す、壊すの判断材料を集める。

その積み重ねが、放置しないということなのだと思う。

答えはまだ出ていない。だが、何が起きるかを知るだけでも、実家を見る目は変わる。

定時のあとの時間を使って、少しずつ実家の空き家問題を整理していく。

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