実家の母屋が空き家になって、しばらく経つ。いつかは片付けなければならない。でも「遺品整理業者」という言葉を検索するのには、なぜか抵抗があった。まだそのときではない、という感覚があった。
それでも調べてみた。知らないままでいることの方が、もっと困ると気づいたからだ。
「遺品整理業者」を検索するのに、抵抗があった
母は今も離れで一人暮らしをしている。元気だ。母屋は空き家だが、母が亡くなったわけではない。
それでも「遺品整理業者」で検索する行為は、どこか後ろめたかった。まるで母の死を前提にしているような気がした。
ただ、実家の大工小屋には、父が使っていた大工道具がそのままある。隣の倉庫には農機具や、祖母の代から残っているものが積まれている。これを誰かの手を借りて片付けるとき、どう動けばいいのか。そのことを今のうちに知っておきたかった。
調べてみると、知らないと損をする話が思ったより多かった。
「遺品整理」「実家整理」「不用品回収」——何が違うのか

検索すると似た言葉がいくつか出てくる。整理しておく。
遺品整理
亡くなった方が残した物を、遺族の意向を確認しながら整理する作業。作業範囲は業者によって異なるため、仕分け・搬出・処分・清掃など、何を含むかを確認する。
実家整理
親が高齢になったり施設に移ったりしたあと、実家の中のものを整理する作業。親が存命のまま行う場合も含まれる。
生前整理
本人が存命中に、将来を見越して自ら行う整理。本人の意思を中心に進める必要がある。
不用品回収
不要な物の収集・運搬を依頼するサービスを指す。家庭の廃棄物を運ぶ場合は、一般廃棄物処理業の許可や市区町村の委託の有無を確認する。
自分の実家に当てはめると、「実家整理」が近い。母屋に積まれたものを、いつか片付ける必要がある。ただ、その作業には父の遺品も含まれる。「遺品整理」と「実家整理」が混在している、というのが正直なところだ。
費用は広さだけでは決まらない
依頼した場合の費用は、部屋の広さだけでなく、荷物の量、分別の程度、搬出経路、処分方法、清掃の有無などで変わる。インターネット上の料金表は比較の入口にはなるが、そのまま自宅の費用になるわけではない。
写真や電話だけでは判断しにくい条件もあるため、現地確認を含む見積もりで、作業範囲と追加料金の有無を確認する必要がある。
作業費とは別に、搬出・廃棄・清掃などの費用が加わる場合もある。見積書では、何が含まれ、何が別料金なのかを確認したい。
実家の母屋は60坪以上あり、1Kや2LDKといった一般的な目安をそのまま当てはめられる大きさではない。以前、解体費用も含めて実家整理の費用を調べた内容は、実家整理の費用相場を調べたにまとめている。整理業者への依頼費用は、その前段階に過ぎない。
業者選びで気をつけること

費用だけでは判断できない。確認すべきポイントをまとめる。
資格と許可を分けて確認する
資格の有無だけで、廃棄物処理が適法かどうかは判断できない。対応方針や実績を確認する一つの目安として見つつ、家庭の廃棄物を誰が収集・運搬・処分するのかを別に確認する。
廃棄物の収集・運搬・処分を確認する
家庭の不用品を廃棄物として収集・運搬する場合、市区町村の一般廃棄物処理業の許可や委託の有無を確認する必要がある。業者自身が許可を持たず、許可業者と連携している場合もあるため、誰が収集・処分するのかを見積書で確認する。環境省の案内でも、家庭の廃棄物は市区町村の許可や委託を受けた業者へ依頼するよう説明されている。
見積書と契約条件を比較する
複数社から見積もりを取り、作業内容、総額、追加料金、キャンセル料、支払方法、作業日を確認する。1社だけで決めると、条件の違いに気づきにくい。見積もりのために来た業者からその場で契約を急かされても、持ち帰って検討してよい。
国民生活センターも、遺品整理では追加料金や作業内容をめぐるトラブルがあるとして、複数の事業者から見積もりを取り、契約内容と料金を比較するよう案内している。国民生活センターの案内を確認しておくと、相場を知っておくだけでも、急かされて決めずに済む。
比較サービスを使う場合(広告)
複数社の費用を比較できる遺品整理110番のようなサービスもある。広告リンクです。料金や対応範囲は時期・地域で変わるため、利用する場合は公式サイトの条件と見積書を確認し、納得できなければその場で決めない。
業者に頼む前に、自分でやっておくことがある

調べてみて気づいたのは、業者に依頼する前に家族でやっておくことが多いということだ。

残すものと処分するものを分ける
何を残して何を処分するかを決めておく。業者は作業を手伝えるが、家族の思い出や所有権に関わる判断を代わりにすることはできない。父の道具や農機具を処分していいかどうか——それは母の意向を確認しておきたい。
貴重品と重要書類を先に分ける
通帳・保険証書・登記関係書類などは、整理作業の前に別に保管しておく。入院のときに書類の場所がわからず慌てた経験がある(親が元気なうちに話しておくべきこと)。その教訓は、実家整理でも同じだ。個人情報が写った書類を、必要以上に撮影・共有しないことにも注意したい。
親族間で認識を合わせる
「あれは誰かが使う」「これは捨てていい」——そういった判断をめぐって、後から揉めることがある。親族間で先に話し、処分するもの・保留するもの・確認が必要なものを分けておく方がいい。
知っておくだけで、気持ちが少し楽になった
「遺品整理業者」という言葉を検索することへの抵抗は、調べてみると消えていた。情報を知ることと、実際に動くことは別だ。
費用の目安を知っておくこと。業者の選び方を知っておくこと。今の段階で自分たちでできることと、業者に任せる部分を分けて考えておくこと——それだけで、漠然とした不安が少し形になった。
「知らないまま」でいるより、「知った上で今は動かない」の方が、ずっと落ち着いて構えられる。
定時のあとの時間を使って、少しずつ。

