実家のことを考えるとき、私は建物の状態や片付けを先に見ていた。
母屋、離れ、大工小屋、畑。それらをまとめて「うちの実家」と呼んできた。
けれど、暮らしの呼び方と、登記上の記録は同じとは限らない。
土地と建物は別々で、建物も一棟ずつ確認が必要になる。固定資産税の書類に載る名前と、登記で確認する名義も、役割を混ぜない方がいい。
名義を確認する目的は、すぐ売却や相続の結論を出すことではない。
何があり、どの書類で、どこまで確認できたのか。その順番を家族で見えるようにすることだと思う。
名義確認は、書類探しの次の工程になる
母が入院したとき、私は実家で通帳、印鑑、保険証書、土地の権利書、固定資産税の通知などを探した。
そのとき分かったのは、書類の所在と、書類の意味は別だということだった。
封筒が見つかっても、それが現在の名義を示すものとは限らない。古い権利書があっても、今の登記記録まで同じとは限らない。
書類をどこから探すかは、実家の書類を探すとき、最初に見る場所に分けている。
050で扱うのは、その次の工程だ。
見つけた書類を一つの束にして安心せず、何を確認するための書類かを分ける。
私は実家の土地と建物について、現在の名義をすべて確認し終えたわけではない。確認できていないものを、父名義や母名義だと推測で埋めないことも大切だと思っている。
「実家」を土地と建物に分けて見る
実家には、母屋、離れ、大工小屋がある。周辺には小さな畑も点在している。
普段は一つの実家として見ているが、名義確認では分けて考える。
- 土地はどの地番に分かれているか
- 母屋、離れ、大工小屋はそれぞれどう記録されているか
- 畑はどの場所と地番が対応するか
- 登記の有無が分からない建物はどれか
- 現在の登記名義人を確認できたものはどれか
ここで「父が建てたから父名義」「母が住んでいるから母名義」と決めない。
建てた人、住んでいる人、固定資産税の書類に名前がある人、登記上の名義人は、確認する資料が違う。
住所だけで目的の土地を特定しにくい場合もある。固定資産税の書類や地図を手がかりに地番を拾い、一筆の土地、一棟の建物ごとに確認する。
最初から正しい答えを知っている前提ではなく、分からない対象を分けるところから始める。
固定資産税の通知は、対象を拾う入口にする

固定資産税の納税通知書や課税明細書は、実家にある土地と建物を拾う入口になる。
自治体や書式によって記載項目は異なるが、所在地、地番、地目、地積、家屋の種類や床面積などを確認できる場合がある。
私の実家のように、建物が複数あり、小さな畑が点在している家では、頭の中の記憶だけで一覧にするのは難しい。
まず、通知や明細に載っている対象を一行ずつ書き出す。
ただし、固定資産税の書類だけで、現在の登記名義や権利関係がすべて確定したとは考えない。
課税のための資料と、不動産登記の記録は目的が違う。通知に載っていないもの、登記されているか分からない建物、場所と地番が結びつかない土地があれば、「未確認」として次へ進む。
固定資産税の金額や住宅用地特例の詳しい話は別の記事で扱う。ここでは、名義確認の対象を漏らさないための入口として使う。
登記事項証明書で、現在の記録を確認する

対象の土地や建物を拾ったら、登記事項証明書で現在の登記記録を確認する。
土地では所在、地番、地目、地積など、建物では所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが記録される。権利部では所有権などの登記内容を確認する。
細かな読み方や、古い名義をどう直すかは、家族だけで判断しない。
まず見るのは、次の三点で十分だと思う。
- 調べたい土地・建物と証明書が対応しているか
- 所有権の登記名義人として誰が記録されているか
- 住所変更や相続など、次に専門家へ確認したい点があるか
土地・建物の登記事項証明書は、法務局の窓口や郵送のほか、オンラインで交付請求できる。登記・供託オンライン申請システムの手続一覧で現在の方法を確認できる。
証明書を取るには、対象を特定する情報が要る。実家の住所だけで迷う場合は、固定資産税の明細、地図、手元の古い書類を並べて、法務局へ確認する。
分からないまま別の土地や建物を調べたつもりにならないことが大切だ。
実際の確認は、一度に全部を終わらせようとしない。
私なら、次の順番で進める。
- 固定資産税の通知や課税明細から、土地と建物を一件ずつ拾う
- 家族の呼び方と、所在地・地番・家屋番号の手がかりを同じ行に置く
- 対象を特定できたものから、登記事項証明書を確認する
- 書類同士が結びつかないものは、未確認として法務局や専門家へ聞く
一件確認するたびに、確認日と使った資料を残す。あとから新しい書類が見つかったときも、どこまで確認した結果なのかをたどれる。
「通知に載っていたから名義確認済み」「古い権利書があったから現在も同じ」とまとめず、対象を拾う工程と、現在の登記記録を見る工程を一段ずつ進める。
書類ごとの役割を混ぜない
実家で見つかる書類には、それぞれ違う役割がある。
一枚で全部を証明しようとせず、次のように分ける。
| 資料 | 主に確認すること | これだけで決めないこと |
|---|---|---|
| 固定資産税の納税通知書・課税明細書 | 課税対象を拾う、地番や家屋の手がかり | 現在の登記名義と権利関係の確定 |
| 登記事項証明書 | 土地・建物ごとの現在の登記記録 | 現地の利用状況や家族の希望 |
| 権利書・登記識別情報通知 | 過去の取得や登記手続に関する重要書類 | 書類がある人を現在の名義人と即断すること |
| 地図・公図・図面 | 地番や土地・建物の位置関係をたどる | 現地境界を家族だけで確定すること |
| 家族の確認メモ | 確認済み・未確認・相談先を共有する | 所有権を証明する正式書類の代用 |
登記識別情報は、登記手続で本人確認に使われる重要な情報だ。
番号や内容を家族の共有メモへ書き写したり、写真を連絡アプリへ載せたりしない。家族メモには「保管場所を誰が確認したか」までにとどめ、必要な手続では法務局や司法書士へ確認する。
地図を見ても境界がはっきりしない場合も、線を家族だけで決めない。名義の確認と、現地の境界確認は別の作業として扱う。
相続登記の期限は、名義確認と分けて確認する
名義を調べた結果、亡くなった父や祖父母など、過去の名義が残っている可能性もある。
そこで必要になるのが、相続登記が済んでいるかの確認だ。
2024年4月1日から相続登記の申請は義務化された。相続によって不動産を取得したことを知った日から、原則として3年以内に申請する必要がある。
制度開始前の相続で、相続登記が済んでいない不動産も対象になる。2024年4月1日より前から相続したことを知っていた場合は、原則として2027年3月31日までが期限と法務省が案内している。
詳しい要件や例外は、e-Gov法令検索の不動産登記法で確認し、個別の事情は法務局や司法書士へ相談する。
一人っ子で争う相手が少ないことと、登記手続が要らないことは別だ。
相続で家族の認識がずれやすい点は、相続で揉めやすいポイントを調べたに分けている。050では、誰が相続するかを決める話ではなく、現在の登記記録と未確認事項を見えるようにする。
名義を確認しただけで、必要な相続登記が終わるわけではない。確認と申請を別の欄にしておくと、終わったつもりになるのを防げる。
家族のメモは「証明」ではなく「次の行動」を残す
名義確認のために作る家族メモは、正式な証明書ではない。
目的は、確認の途中を家族が見失わないことだ。
私なら、土地・建物ごとに次の欄を作る。
- 呼び方と所在地
- 地番または家屋番号
- 固定資産税書類で確認した日
- 登記事項証明書で確認した日
- 記録されている登記名義人
- 未確認の点
- 次に相談する先
「母屋」「離れ」「裏の畑」といった家族の呼び方も残す。ただし、その横に正式な地番や家屋番号を確認できたかを書く。
空欄を推測で埋めない。「登記の有無が未確認」「場所と地番が結びつかない」「古い名義の可能性」と、そのまま記録する。
たとえば家族が「裏の畑」と呼ぶ場所なら、その呼び方を消さずに残し、横へ「課税明細の候補はあるが地番との対応は未確認」と書く。
母屋について登記事項証明書を確認できた場合は、「母屋」「確認した地番・家屋番号」「証明書の取得日」「登記名義人として記録されている人」「次に確認すること」を一組にする。
ここで大切なのは、「父のもの」「母のもの」と家族の結論を書くのではなく、どの資料で何を確認したかを書くことだ。書類の内容が古い、住所が現在と違う、相続が関係しそうと分かった場合も、家族だけで直し方を決めず、相談したい点として残す。
メモの一行が完成しなくてもよい。家族の呼び方しか分からない段階、固定資産税の書類まで確認できた段階、登記事項証明書まで確認できた段階を分ければ、次にすることが見える。
権利書や登記識別情報の番号、本人確認書類の写し、暗証番号などは入れない。
このメモを見れば、次に固定資産税担当へ聞くのか、法務局で証明書を取るのか、司法書士へ相談するのかが分かる。その状態まで整えば、名義確認は前に進む。
名義確認と、実家をどうするかは別に決める
名義を確認すると、すぐ売る準備のように見えるかもしれない。
けれど、確認したことと、処分を決めたことは同じではない。
母が今使う範囲、母屋の役割、畑の扱い、父の道具への思いは、登記事項証明書だけでは決まらない。
名義確認で整えるのは、選択肢を考える前提だ。
売る、貸す、壊す、期限を決めて保留する。それぞれの判断は、実家を売るか・貸すか・壊すかの判断軸で扱っている。
050で先にそろえるのは、土地と建物の対象、現在の登記記録、確認できていない点、次の相談先だ。
実家の名義を確認することは、親の財産を子が決めることでも、実家を終わらせることでもない。
推測で話を進めず、母の意思を聞くための土台を整えることだと思う。
定時のあとの時間を使って、確認できたことと分からないことを一つずつ分けていく。

