相続で揉めやすいポイントを調べた

相続で揉めやすいポイントを調べた 親と実家

相続という言葉を聞くと、以前は大きな財産を持つ家の話だと思っていた。

私の実家にあるのは、母屋、離れ、大工小屋、点在する小さな畑、父の道具、仏壇と墓だ。売れば大きなお金になるものというより、これから扱いを決めなければならないものの方が多い。

しかも私は一人っ子なので、自分の親の相続で分け方を争う相手はいない。相続でもめるという意味では、自分にはあまり関係がないと思っていた。

気になり始めたのは、同級生や同世代の同僚から、親の相続で苦労したという話を聞くようになったからだ。

調べてみると、問題になるのは財産の額だけではなかった。分けにくい不動産、過去の援助、介護の負担、親の考えを知らないこと。家族の間で見え方が違うものが残ると、話し合いの入口で止まりやすい。

私は専門家ではない。ここでは法律の結論を出すのではなく、自分の実家に置き換えて、家族の認識がずれやすい場所と今確認できることを整理しておきたい。

相続でずれやすいのは、金額より見え方だった

現金は、金額としては見えやすい。誰がどの財産を受け取るかは別として、残高を確認し、合計を出すことはできる。

実家の建物や土地は、同じようにはいかない。

親が暮らした大切な場所と見る人もいれば、税金や管理が続く負担と見る人もいる。貸せる資産だと思う人もいれば、解体費用が必要な建物だと考える人もいる。同じ家を見ていても、見えているものが違う。

過去の援助や介護も同じだ。

親から受け取ったお金を、親子の自然な助け合いと考える人もいる。相続を先に受け取ったように感じる人もいる。親の近くで介護した人と、遠くから費用を出した人では、負担の受け止め方も違う。

法律上の扱いは個別の事情によって変わる。だからこそ、最初から「これが公平」と決めるのではなく、家族の間で何の見え方が違いそうかを確かめる必要があると思った。

4つのポイントを表にすると、話す順番が見える

相続で家族の認識がずれやすい場所を、私は次の4つに分けて考えることにした。

ずれやすい場所見え方が分かれやすいこと今確認しておくこと
不動産思い出の場所・住む家・売れる資産・管理の負担名義、利用者、維持費、売却や解体の見通し
過去の援助親子の助け合い・贈与・相続分の前渡し時期、目的、金額、残っている資料
介護や費用負担家族として当然の支援・特別に重い負担誰が何を担い、費用を誰が出したか
親の意思と書類聞いたつもり・伝えたつもり・誰も知らない財産一覧、書類の場所、遺言書の有無

この表だけで遺産の分け方が決まるわけではない。

ただ、いきなり「誰が何を受け取るか」から話すより、事実が分かっているか、家族の見え方が違っていないかを先に確認できる。

相続が始まってから一度に調べるのではなく、親が話せるうちに一項目ずつ確かめておく。その方が、話し合いの土台を残せると思う。

実家は、二つに割れない

二つの紙束の間に家の鍵を置き実家が簡単に分けられないことを表す机

私の実家には、母が暮らす離れ、ほぼ使っていない母屋、大工小屋、畑がある。

現金なら金額で分けられるが、家は二つに割れない。

誰かが住むのか。売るのか。貸すのか。解体するのか。空き家のまま持つのか。選択肢はいくつもあるが、どれにも使う人、費用、管理、名義の問題がついてくる。

私の実家は公共交通機関がほとんどない地域にあり、似た条件の物件を見ても、簡単に買い手がつくとは考えにくかった。父の道具や家財も残っている。売却や解体を考えるとしても、その前に整理が必要になる。

立地の良い家を相続した会社の先輩は、リフォームして貸していた。それでも設備の修理や交換が続き、思ったほどは残らないと話していた。貸せる場所でも、持ち続ける手間がなくなるわけではないようだった。

実家を資産と見るか、負担と見るか。それを決めつける前に、誰が使うのか、維持にいくらかかるのか、売却や賃貸の可能性があるのかを分けて確認する必要がある。

私の場合は一人っ子なので、家を誰と分けるかではなく、この場所を自分の代でどう整理するかが問題になる。争う相手がいなくても、判断と手続きがなくなるわけではない。

介護や援助は、そのまま相続分にはならない

親を支えた時間や費用は、家族の中で受け止め方が分かれやすい。

近くで介護をした人。遠くから通った人。費用を出した人。仕事や家庭の事情で動けなかった人。それぞれに事情があり、単純に回数や金額だけで比べることはできない。

私も母のもとへ週に一度ほど通い、買い物や通院、書類の確認などをしている。これは自分で担うと決めて続けていることで、相続の取り分に換算したいわけではない。

ただ、兄弟姉妹がいる家なら、「誰がどれだけ担ったか」という記憶が食い違うことはあり得る。何も残っていなければ、負担した側は分かってもらえなかったと感じ、動けなかった側は責められたと感じるかもしれない。

介護をしたことや費用を出したことが、自動的に相続分を増やすわけではない。裁判所の相続に関する手続案内を見ると、被相続人の財産の維持や増加への特別な貢献を扱う「寄与分」などの手続がある。ただし、どの支援が法律上の寄与として扱われるかは個別の事情による。

記録を残す目的は、自分の取り分を増やすためだけではない。

訪問した日、立て替えた費用、親から受けた援助、利用したサービスを、分かる範囲で事実として残しておく。領収書や振込記録も保管する。それだけでも、後から記憶だけで争う場面を減らせると思う。

法的な扱いを判断する必要が出たら、家族だけで結論を出さず、弁護士などの専門家に確認したい。

書類と名義が分からないと、話し合いの前で止まる

相続の話し合いには、何が残っているかという事実が必要になる。

預金、不動産、保険、借入、親から受けた援助、遺言書。それらの有無や場所が分からなければ、分け方を考える前の段階で止まってしまう。

母が入院したとき、私は通帳や保険証書、土地の権利書を探した。古い証書と新しい証書が混ざり、どれが有効なのか分からない。通帳があっても、どの印鑑を使うのか分からない。土地の書類もすぐには出てこなかった。

不動産では、名義の確認を後回しにしにくくなっている。

法務省の相続登記案内によると、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化された。相続で不動産を取得したことを知り、その取得を知った日から3年以内に申請するのが基本となる。制度開始前の相続で未登記の不動産も対象になるため、古い名義が残っている場合は期限を確認する必要がある。

詳しい名義確認の進め方は、実家の名義を確認しておくべき理由に分けて書いた。

今の段階で私がしたいのは、すぐに相続の結論を出すことではない。

固定資産税の通知に何が載っているか。土地と建物の名義は誰か。通帳や保険証書はどこにあるか。分からないものは何か。まずは一覧にし、次に調べる場所を見えるようにしておきたい。

親の希望と、法的に残すことは分けて考える

相続では、「親がこう言っていた」という記憶も食い違いやすい。

実家を残してほしい。預金はこの人に渡したい。墓はこうしてほしい。話を聞いた人、時期、受け取り方が違えば、同じ言葉でも意味が変わる。

親の希望を聞いておくことは大切だが、会話やエンディングノートがそのまま法的な遺言になるわけではない。連絡先や契約、医療・介護、葬儀や墓など家族が迷わないための情報と、財産の分け方として法的な効果を持たせたい内容は分けて考える必要がある。

法務省の自筆証書遺言書保管制度では、自分で作成した自筆証書遺言を法務局で保管する仕組みが案内されている。ただし、遺言書には方式や内容の注意点があるため、作成を考える場合は専門家への相談も選択肢になる。

エンディングノートと遺言書の違いは、何を、いつ書くのかを調べた記事に整理した。

私自身は、母に遺言書を作ってほしいと迫る段階ではない。

まず、何を大切にしたいのか、実家や墓をどう考えているのかを、暮らしの延長として少しずつ聞く。法的に残す必要がある内容が見えてきたら、そのときに方法を確認する。その順番でいいと思っている。

相続税は、揉める問題とは別の軸で見る

相続を調べると、相続税の話も出てくる。

ただ、相続税がかかるかどうかと、家族の話し合いがまとまるかどうかは別の問題だ。

税金がかからない規模でも、不動産の使い方や介護の負担で認識がずれることはある。反対に財産が多くても、内容と親の意思が共有され、必要な手続が準備されていれば、確認する順番は作りやすい。

相続税には基礎控除があり、法定相続人の数や財産の評価によって申告の要否が変わる。不動産は売れそうな価格と税務上の評価が同じとは限らない。詳しくは、相続税はいくらからかかるのかを調べた記事で国税庁の情報をもとに整理した。

この記事では税額の計算まで広げず、家族の見え方がずれやすい場所を先に確認することに集中したい。

揉めないために、今できること

調べてみて、相続の準備は「分け方を先に決めること」ではないと感じた。

まず、何があるかを知る。誰が使っているかを知る。名義を知る。維持費や介護の負担を、記憶だけにせず残す。親の希望を、決めつけずに聞く。

私の場合、話す相手は主に母だ。

いきなり「相続のため」と切り出せば、身構えると思う。保険の話をするだけでも簡単ではなかった。だから、一度に全部を聞くのではなく、今の暮らしで必要な確認から始めたい。

固定資産税の通知を一緒に見る。

土地と建物の書類がどこにあるか聞く。

通帳や保険証書の保管場所を確認する。

実家や墓を、この先どうしたいか少しずつ聞く。

これだけで相続の問題が解決するわけではない。それでも、「知らない」「聞いていない」「自分だけが負担した」というずれを小さくする土台にはなる。

私の家も、まだ何も終わっていない。実家も、墓も、仏壇も、保険も、途中のままだ。

争う相手がいないから準備が不要なのではない。次の世代へ分からないものを残さないために、自分の代で事実を見えるようにしておく。

定時のあとの時間を使って、まずは書類と名義から少しずつ整理していきたい。

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