解体見積もりを取る前に確認すること

解体見積もりを取る前に確認すること 親と実家

実家の片付け費用を調べたとき、最も大きな金額になりそうだったのが建物の解体だった。

ただ、坪単価に母屋の広さを掛けただけでは、実際の見積もりにはならない。

私の実家には、60坪を超える母屋、母が暮らす離れ、父の道具が残る大工小屋がある。家財、庭木、塀、設備のどこまでを対象にするのかも見えていない。

母屋を壊すかどうかは、まだ決めていない。解体業者にも声をかけていない。

それでも、いつか見積もりを取るなら、同じ条件を伝えなければ金額を比べられない。

今回は費用相場を並べ直すのではなく、解体範囲、残す物、石綿の事前調査、届出、追加費用の条件を、見積もり前の一枚へ整理する。

解体するかどうかより、何を見積もるかを決める

「実家の解体見積もり」と頼んでも、我が家には建物が三棟ある。

母屋だけを壊すのか。

大工小屋も含めるのか。

母が暮らす離れは残すのか。

建物以外の塀、庭木、物置、土間などをどうするのか。

対象が違えば、見積額が違うのは当然である。

先に実家を売るか・貸すか・壊すかの判断軸を整理したとき、解体しても土地の管理は残ると分かった。

見積もりは、壊す決断を業者へ任せるために取るものではない。

残して管理する費用と、壊した後に続く費用を比べる材料にする。

最初の依頼では、次のように対象を明記したい。

区分見積もり対象残す範囲未確認
母屋建物本体を候補にする仏壇・家財は別判断延べ床面積、構造、建材
離れ原則として対象外母の住まいと生活動線母屋との設備のつながり
大工小屋別項目で確認する道具・農機具を先に分ける建物面積、構造、搬出経路
外構・庭一点ずつ指定する境界、残す木、通路塀・土間等の所有と範囲

「一式」の前に、対象外を言葉にしておく。

建物本体と、家財・付帯物を分ける

解体見積もり前に建物と分けて確認する電動工具や大工道具

母屋には荷物が残っている。

大工小屋には、父の電動工具、ノコギリ、ノミ、カンナ、古い農機具、祖母の代からの物がある。

これらを建物と一緒に処分できる前提にはしない。

残す物、触らない物、確認してから決める物という家族側の線引きは、不用品回収業者に頼む前に決めることにまとめている。

解体見積もりで分けたいのは、その先である。

  • 工事前に家族が運び出す物
  • 残置物として処分を依頼する物
  • 買取や別の窓口へ回す物

残置物をどこまで解体業者へ頼めるかは、業者と品目によって違う。

仏壇、家電、農機具のように扱いが別になる物があるかを、先に聞いておく。

家財だけでなく、付帯物も一点ずつ分ける。

  • 倉庫、物置、カーポート
  • ブロック塀、門、フェンス
  • 庭木、切り株、庭石
  • 浄化槽、井戸、地下タンクなどの有無
  • 土間コンクリート、舗装、基礎
  • 仏壇、家電、農機具、工具

この中には我が家にない物、あるか確認できていない物もある。

「不明」と伝え、現地調査で確認する項目にする。

見積書には、建物本体、家財、付帯物を別の行で示してもらう。

家族が先に処分する範囲を変えたとき、どの金額が動くか分かるようにするためだ。

重機と搬出の条件を現地でそろえる

実家の解体見積もり前に進入口と離れへの生活動線を確認する様子

解体費用は、建物の広さと構造だけで決まらない。

重機やトラックがどこまで入れるか、廃材をどう運び出すかによって作業方法が変わる。

私の実家は三棟が同じ場所にあり、母は離れで暮らしている。

母屋を解体するなら、工事車両と母の生活動線を分けられるかが先に必要になる。

現地確認では、次の条件を同じように見てもらう。

  • 前面道路の幅と進入方向
  • 重機、トラック、廃材置場の位置
  • 電線、軒、門、塀、庭木との距離
  • 離れへの出入り、水道、電気などを残せるか
  • 隣地との境界と、どちらの物か確認が必要な塀・樹木
  • 作業中に人が立ち入らない範囲
  • 粉じん、騒音、振動への近隣対応

境界標や図面が見つからない場合は、解体業者だけで境界を決めない。

土地家屋調査士、法務局、市区町村、不動産会社など、確認内容に合う先へ分ける。

母屋の電気と水道は、法要や掃除のために残してきた。

工事前にいつ止め、離れへ影響しない形で何を残すかも、契約先と業者の役割を確認する。

修繕見積もりと、解体見積もりを混ぜない

古い家に傷みが見つかると、直す場合と壊す場合の両方を聞きたくなる。

しかし、修繕と解体では、見積もる目的も範囲も違う。

実家の修繕をどこまで行うか考えた記事では、安全、傷みの拡大防止、現在の使用、将来の利用に分けた。

解体見積もりを取る場合も、現在の安全対応を止めてよいわけではない。

見積もりを待つ間、人や隣地へ影響するおそれがあれば、立入りを止め、状況に合う専門家へ相談する。

一方、売却や賃貸を前提にした内装の更新は、出口が決まる前に進めない。

比較したいのは、次の三つである。

選択今確認する費用見落とさないこと
残して管理点検、保険、税、草木、必要な修繕管理する人と期限
安全のため一部対応危険箇所の撤去、応急対応全体解体と二重にならない範囲
建物を解体本体、付帯物、廃棄物、整地、手続き解体後の土地管理と税

解体費が分かっても、それだけでどの選択がよいかは決まらない。

石綿の事前調査を、別費用として確認する

古い建物の解体では、石綿、いわゆるアスベストの確認を避けて通れない。

建築物の解体・改修工事では、元請業者または自主施工者が、石綿含有建材の使用の有無を事前に調査する必要がある。

2023年10月1日以降に着工する建築物の工事では、原則として資格を持つ調査者による事前調査が必要とされている(厚生労働省「小規模工事等の着工前に必要な手続き」)。

また、建築物の解体部分の床面積が合計80平方メートル以上の場合は、事前調査結果を都道府県等へ報告する対象になる(環境省「石綿事前調査結果の報告について」)。

60坪を超える母屋は、この規模を上回る可能性が高い。

ただし、私の記憶にある広さではなく、登記や図面で延べ床面積を確認する。

見積書では、次の項目を分けて聞く。

  • 事前調査を行う人の資格と調査範囲
  • 書面調査、目視調査、分析調査のどこまで含むか
  • 事前調査費と、分析が必要になった場合の費用
  • 石綿含有が判明した場合の工法、届出、追加費用
  • 調査結果の説明と記録を、いつ受け取れるか

「石綿がない前提」の総額だけを比べない。

含有の有無が分からない段階なら、判明後にどの項目が変わるかを書面で残す。

見積書は、内訳と追加条件を同じ表で比べる

坪単価は、建物本体の規模を考える入口にはなる。

しかし、私が以前出した粗い概算は、現地見積もりではない。実家の片付けにかかる費用を調べた記事の数字を、そのまま予算にはしない。

解体見積もりでは、少なくとも次の内訳を確認する。

見積項目含まれる範囲追加になる条件
仮設工事足場、養生、仮囲い範囲変更、道路条件
建物本体構造、延べ床面積、基礎図面と現況の差
分別・運搬・処分廃材の種類、運搬、処分想定外の建材、処分量
家財・残置物対象品と数量見積後に残った物
付帯物塀、庭木、土間、物置等対象の追加
石綿対応事前調査、分析、除去含有判明、工法変更
整地仕上げ方法、残す高さ地中埋設物、地盤条件
手続き・諸経費届出、現場管理、近隣対応代行範囲の追加

「追加費用が出ることがあります」だけで終わらせず、何が見つかったとき、誰が確認し、どの単価や見積もりで追加するかを聞く。

地中埋設物など、着工前に全てを確認できないものもある。

その場合は、発見時に写真と位置を示し、撤去前に家族へ連絡する手順を契約書へ残す。

複数社を比べるなら、同じ対象範囲、同じ残置物、同じ整地条件を渡す。

条件の違う総額だけを並べない。

届出、登録、解体後の手続きを確認する

解体後も残す離れへの通路と水道まわりの暮らし

一定規模以上の解体工事には、工事そのもの以外の手続きがある。

建設リサイクル法では、床面積80平方メートル以上の建築物の解体工事について、分別解体と再資源化等が必要になる。

対象工事では、発注者が工事着手の7日前までに都道府県知事へ計画等を届け出る。

契約書へ解体費用や再資源化等の費用を明記することも定められている(環境省「建設リサイクル法の概要」)。

業者へ任せる場合も、発注者側に必要な届出が何か、誰が書類を作り、誰の名義で提出するかを確認する。

解体工事業者については、建設業の許可または都道府県の解体工事業登録など、工事に必要な資格・登録の確認が要る。

建設業の許可は工事の種類ごとに行われ、解体工事業も一つの業種として設けられている(国土交通省「建設業の許可とは」)。

許可番号や登録番号を見積書へ書いてもらい、必要なら許可行政庁へ確認する。

解体費用の補助や、跡地の活用に関する制度は、自治体ごとに有無も条件も違う。

私の実家がある市に何があるかは確認できていない。

申請の受付時期や、着工前の申請が条件になる場合もあるため、見積もりを取る前に市区町村の空き家担当窓口へ聞く項目にしておく。

建物を取り壊した後は、建物滅失登記も必要になる。

不動産登記法では、建物が滅失した日から1か月以内に申請することとされている。

申請方法や必要書類は、管轄の法務局または土地家屋調査士へ確認する(法務局「建物を取り壊した」)。

見積もり段階で、完了時に受け取る書類も聞いておく。

  • 工事完了を確認できる書類と写真
  • 廃棄物や再資源化に関する報告
  • 石綿事前調査・対応の記録
  • 建物滅失登記に使う取壊し証明書等
  • 請求書と追加費用の根拠

壊し終わった日を、手続きの始まりとして残す。

解体後の土地と母の暮らしも先に描く

母屋を壊した後も、離れと土地は残る。

母が安全に出入りできる通路、水道や電気、郵便や配達の動線を、工事後も保てるかを確認する必要がある。

更地になれば、草刈り、排水、境界、車の出入り、固定資産税の見方も変わる可能性がある。

空き家の固定資産税と住宅用地特例を調べた記事では、建物を壊した後だけでなく、管理不全のまま残す場合も個別に確認する必要を整理した。

見積もりには、解体後の仕上がりを曖昧にしない。

  • 基礎をどこまで撤去するか
  • 地面をどの高さと状態へ整えるか
  • 雨水の流れをどう保つか
  • 境界標や残す設備をどう保護するか
  • 離れへ続く通路と配管をどう残すか
  • 工事後に誰が土地を管理するか

解体費が安くても、残す設備を傷めたり、工事後の管理が難しくなったりすれば、家族の目的に合わない。

母屋をなくすことではなく、解体後も母の暮らしと土地の管理が続く形を見積もる。

最初に書くのは、壊す物ではなく壊さない物

今の我が家は、解体工事を発注する段階ではない。

母屋には仏壇と荷物があり、母は同じ敷地の離れで暮らしている。

父の仕事が残る大工小屋も、道具をどうするか決めていない。

最初に作る一枚には、壊したい物より、対象外と未確認を書く。

離れは対象外。

母の生活動線は残す。

仏壇、家財、父の道具は別に確認する。

建物面積、境界、設備のつながり、石綿、付帯物は現地で確認する。

その条件を同じ形で渡して初めて、見積額の違いを読めるようになる。

解体するという答えは、まだ出ていない。

それでも、見積もりを取る前の準備なら、今日から始められる。

金額の比べ方を業者へ預けず、壊さない物の一覧を先に自分で書く。

派手な作業ではないが、その一枚があるかどうかで、見積書の読み方は変わる。

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