母屋、離れ、大工小屋、その周辺に点在する小さな畑。
家族の中では、全部まとめて「実家の土地」と呼んできた。
しかし、どこに何筆あり、どの地番が家族の呼び方と対応するのか、私は把握しきれていない。父が亡くなってから名義を変えていない土地もある。
固定資産税の書類を見つけても、それだけで土地の全体や現在の登記名義まで確定するわけではない。地図で畑を見つけても、所有権や境界が分かるわけではない。
名寄帳という言葉も、私は最近まで知らなかった。固定資産税の通知は毎年見ていたのに、その通知の元になる台帳を名義ごとにまとめた帳票がある、という発想がなかった。
今回は、名寄帳、2026年に始まった所有不動産記録証明制度、登記事項証明書、eMAFF農地ナビの役割を分け、場所と地番が結びつかない状態から親の土地を調べる順番を整理した。
家族が知っている場所と、不動産の一覧は同じではない
実家の周辺には、小さな畑が何か所かある。
「裏の畑」「道路の向こう」「昔、祖母が使っていた場所」といった呼び方なら分かる。しかし、その呼び方から地番、地目、面積、登記名義人まではたどれない。
母屋、離れ、大工小屋も、同じ敷地に見えるから一組とは限らない。土地は筆ごと、建物は棟ごとに記録を確認する必要がある。
母が入院したとき、私は通帳や保険証書と一緒に、固定資産税の通知や土地の権利書を探した。どこに何があるか分からない状態から始まった。
この経験から、最初から「所有している土地の一覧」を作ろうとしない方がよいと考えるようになった。
まず作るのは、家族が知っている場所の一覧である。
| 家族の呼び方 | 現在の使い方 | 書類の手がかり | 地番との対応 |
|---|---|---|---|
| 母屋の敷地 | 母屋、離れ、大工小屋がある | 固定資産税の書類を確認 | 未確認 |
| 裏の畑 | 現在の利用状況を現地で見る | 候補となる地番を探す | 未確認 |
| 道路の向こうの畑 | 場所を地図に印す | 母に呼び方を聞く | 未確認 |
空欄を推測で埋めず、同じ場所を別名で数えている可能性も残す。
使う予定のない土地ほど、確認が後回しになる
私は、農業をやるつもりがなかった。
父や母は家庭菜園の延長で畑を使ってきたが、私はそれを継ぐつもりで育っていない。畑は母屋の風景の一部で、土地そのものへ関心を向けたことがなかった。
面積もまとまっていない。何か所かに分かれた小さな土地なので、貸す、誰かに任せる、運用するといった考えにもならなかった。使う予定がなく、まとまってもいない土地は、頭の中で「実家の一部」として丸められたまま残る。
ただ、使う予定がないことと、記録を確認しなくてよいことは別である。
使わない土地にも、課税、名義、管理の責任は続く。相続登記のように、使っていなくても期限が決まっている手続きもある。手放す、貸す、そのまま持つのどれを選ぶにしても、対象が特定できていなければ相談も始まらない。
関心を向けてこなかった土地ほど、家族の中で確認されないまま残りやすい。今回、調べる順番を整理したのは、価値を見積もるためではなく、その空白を埋めるためである。
名寄帳とは、固定資産税の対象を名義ごとにまとめた帳票である

名寄帳は、固定資産課税台帳に登録された土地や家屋を、納税義務者ごとにまとめた帳票である。
自治体によって名称、記載項目、請求できる人、手数料、郵送や電子申請の可否は異なる。一般には、土地・家屋の所在、評価額、課税標準額などを確認できる。
名古屋市の案内では、同一区内の納税義務者ごとに固定資産課税台帳の土地・家屋をまとめたものと説明されている。一方で、非課税の土地・家屋は記載されず、証明書ではないとも明記されている(名古屋市「名寄帳(土地・家屋)の閲覧」)。
ここが大切である。
名寄帳に載っているものは、土地を拾う有力な手がかりになる。しかし、名寄帳に載っていないから、その人名義の不動産がないとは言い切れない。
また、通常は自治体や課税区ごとの資料である。別の市区町村にも土地があれば、その自治体の名寄帳を別に確認することになる。
私の実家では、まず固定資産税の納税通知書と課税明細書を入口にする。そのうえで、物件がある自治体へ、次の点を聞く。
- 名寄帳の正式な名称
- 誰が請求できるか
- 本人以外が請求するときの委任状や戸籍等
- 土地と家屋を一緒に確認できるか
- 非課税物件や共有名義の扱い
- 郵送、電子申請、窓口の方法と手数料
実家の書類を探す順番は、固定資産税の通知や権利書を最初に見る場所へ分けている。
2026年からは、全国の登記名義を一覧で探せる制度もある

名寄帳は自治体の課税資料である。
これに対し、2026年2月2日に始まった「所有不動産記録証明制度」は、登記簿上で特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、一覧にして証明する制度である。
法務省は、相続人が亡くなった人名義の不動産を把握しやすくし、相続登記の漏れを防ぐための制度と説明している(法務省「所有不動産記録証明制度について」)。
これまでのように、土地ごとに登記を探す前に、父の登記名義で記録された不動産を全国から一覧にできる可能性がある。
ただし、請求書に書いた氏名・住所と、登記簿上の氏名・住所が一致しない不動産は抽出されないことがある。古い住所、旧字体、表記の違いがありそうなら、検索条件をどう書くか法務局へ確認したい。
この制度も万能ではない。
未登記の建物や、そもそも父名義として登記されていない土地までは拾えない。名寄帳と所有不動産記録証明書の片方だけで全体を確定せず、両方の差を見る資料として使う。
四つの資料は、分かることが違う
土地を調べるとき、資料の数が増えるほど混乱しやすい。
私は、次の四つに役割を分ける。
| 資料・サービス | 主に分かること | これだけでは決めないこと |
|---|---|---|
| 固定資産税の課税明細・名寄帳 | 課税対象、所在、評価の手がかり | 全国の不動産、現在の登記名義、境界 |
| 所有不動産記録証明書 | 指定した氏名・住所に一致する全国の登記名義の一覧 | 未登記物件、表記が一致しない登記、現況 |
| 登記事項証明書・地図等 | 一筆・一棟ごとの登記記録、所在、地番、地目、地積等 | 現地での使い方、境界の現地確定、家族の希望 |
| eMAFF農地ナビ | 農地の所在・地番、地目、面積等の地図上の手がかり | 所有権の証明、売買・転用の可否、境界の確定 |
eMAFF農地ナビでは、市区町村と大字、地番などから農地を検索できる。農地の所在・地番は住居表示と異なり、登記等で使われる記載をもとにしている点にも注意が要る(eMAFF農地ナビ「使い方」)。
地図上で家族の記憶に近い畑が見つかっても、「これがうちの土地だ」と画面だけで確定しない。
候補となる所在・地番を控え、固定資産税の資料や登記事項証明書と照合する。分からなければ、所管の農業委員会や法務局へ、何を確認したいかを分けて相談する。
現地を見に行く前に、写真より先に呼び方を残す

正直に言えば、現地を見るのは少し怖い。
何年も手を入れていない土地なら、草木が伸びて、どこからが敷地なのかも分からない状態になっているはずだ。母屋の周りの草刈りでさえ、業者へ頼む範囲を場所ごとに分けることを考える段階にある。離れた畑を同じように見て回れるとは思っていない。
見に行けば、放っておけないものが増える。それが分かっているから足が向かない。
それでも、順番を変える必要はないと考えている。今やることは草を刈ることではなく、その土地がどの地番なのかを確かめることである。手入れをどうするかは、対象が分かってからでよい。
一度に全部を見に行かない。夏の盛りを外す。一人で藪へ入らない。所在の確認だけなら、道路から見える範囲と地図で足りることもある。
現地へ行けば分かると思っていても、畑には住居表示の看板がないことが多い。
写真を撮っても、数年後に草木や周辺の建物が変われば、どの方向から撮ったのか分からなくなる。
私は、家族の呼び方を消さず、その横へ正式な情報を足す形にしたい。
- 母から聞いた呼び方をそのまま書く
- 地図へ大まかな位置を印す
- 課税明細や名寄帳の候補を並べる
- eMAFF農地ナビ等で所在・地番の候補を見る
- 登記事項証明書などで一筆ずつ確認する
- 現地との対応が取れた日と、確認した人を書く
土地の名義を確認する資料の違いは、実家の名義を土地と建物に分けて確認した記事にまとめている。今回は、その前段にある「対象を拾い切ること」へ集中する。
写真を残す場合も、権利書、登記識別情報、評価額、住所、氏名が読める書類をそのまま共有しない。家族用の位置メモと、重要書類の保管を分ける。
所有、利用、境界、処分の可否を一度に決めない
畑を見つけると、次は「売れるか」「使わないなら手放せるか」が気になる。
しかし、次の四つは別の確認である。
- 誰が登記名義人として記録されているか
- 現在、誰がどのように使っているか
- 境界が現地でどこにあるか
- 売買、貸借、転用等にどの手続きが要るか
地図や登記事項証明書を見ただけで、現地の境界を家族だけで決めない。農地の売買や貸借、転用には農地法等の手続きが関わるため、所管の農業委員会へ確認する。
また、土地を拾い切る作業と、価格を付ける作業も分けたい。
実家を売る前の不動産査定で確認することでは、母屋、離れ、大工小屋、土地を査定対象へ分けた。場所と名義が未確認の土地は、査定額へまとめて入れず、別の確認項目として残す。
固定資産税の評価額、売買価格、農地としての利用条件も同じ数字ではない。税の資料を見つけた段階で資産価値を決めつけない。
一枚の土地台帳には、確認した事実と次の行動だけを書く
我が家で作る土地台帳は、立派な財産目録ではない。
次に誰が何を確認するかが分かる一枚でよい。
| 欄 | 書く内容 |
|---|---|
| 家族の呼び方 | 裏の畑、道路向こう等 |
| 所在・地番 | 資料で確認できた表記。候補は候補と書く |
| 種類 | 宅地、田、畑、山林等。資料名も残す |
| 面積 | 確認した資料と日付を併記する |
| 登記名義 | 登記事項証明書等で確認した内容だけを書く |
| 現在の利用 | 母が使う、貸している、未確認等 |
| 資料 | 名寄帳、登記事項証明書、地図等の所在 |
| 次の確認 | 自治体、法務局、農業委員会、家族の誰へ聞くか |
固定資産税の負担や住宅用地特例は、空き家の固定資産税を調べた記事へ分ける。
この台帳には、登記識別情報の番号、本人確認書類の写し、細かな評価額まで載せない。家族が見る作業用の一覧と、重要書類は別に保管する。
一行が完成しなくてもよい。「地番候補まで」「名義確認済み」「現地との対応が未確認」と段階を残せば、同じ調査を繰り返さずに済む。
一筆ずつ分かってきたら、次は名義を実際に動かす番になる。相続登記を自分で進める前にでは、必要書類と法務局への相談順を整理した。
我が家は、裏の畑を一筆だけ照合するところから始める
今の私は、実家の土地をすべて把握できていない。
名寄帳を取得し、全国の登記名義を一覧にし、農地を地図で確かめれば、すぐに完成するとも考えていない。
古い住所や名義、非課税の土地、未登記の建物、家族の記憶と地番のずれが残る可能性があるからだ。
まずは固定資産税の書類を一か所へ集め、家族が「裏の畑」と呼んでいる一か所について、課税資料、地図、登記記録の三つを照合する。
一筆の対応が分かれば、残りの土地にも同じ順番を使える。
土地を急いで処分するためではない。母が説明できるうちに、家族の呼び方を正式な記録へつなぎ、次の手続きを漏らさないための準備である。
名寄帳の名称と請求できる人を、実家のある市の窓口へ一つだけ聞く。畑を見に行くのは、その紙が手元に来てからでよい。

