休暇を申請するとき、勤務先の書式には理由を書く欄がある。
多くの人は「私用」や「家事都合」と書いている。それで手続きが進むなら、家族の事情を詳しく知らせる必要はないと思う。
一方、私は母の用事で休むとき、「母通院」「母介護」「母役場に連れていく」と最初から具体的に書いている。
母の病名や治療内容まで説明したいわけではない。申請後に理由を聞かれ、同じ説明を繰り返す手間を避けたいからだ。
「私用」と書くか、親の介護と書くか。そもそも理由を書く義務があるのかを厚生労働省の説明で確かめ、そのうえで私が理由欄へ書く範囲と、書かない範囲を整理した。どちらか一つを正解にはしない。
理由欄で迷うのは、休む理由と仕事の情報が混ざるからだ

申請書の理由欄は小さい。
だが、そこへ何を書くかを考え始めると、親の病状、家族の事情、職場での立場、休む日の仕事まで頭に浮かぶ。
私は以前、この全部を説明しなければ休みにくいように感じていた。
今は、二つに分けて考えている。
- 休暇の理由として、どこまで伝えるか
- 不在に備えて、仕事の何を伝えるか
前者は家族の情報であり、後者は職場で必要な情報だ。
仕事の側で必要なのは、休む日、不在になる時間、戻れる見込み、急ぎの仕事の扱いである。親の診断名や検査結果を詳しく書いても、引き継ぎが決まるわけではない。
通院日に職場と調整する順番は、親の通院付き添いで仕事を休むときの職場への伝え方に委ねる。ここでは、申請書の小さな理由欄だけを考える。
理由欄へ具体的に書く場合も、この二つを混ぜないことが私の境界になっている。
調べてみると、休む目的は労働者の自由だった
毎回同じところで迷うなら、制度の側を確かめた方が早い。
厚生労働省の「確かめよう労働条件」のQ&Aには、年次有給休暇をどのような目的でとるのかは労働者の自由であり、使用者はその目的によって取得を拒むことはできない、と書かれている。休む理由の中身を審査して、休めるかどうかを決める制度ではない。
同じページでは、時季変更権についても説明されている。労働者が指定した時季に休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」に、使用者が他の時季へ変えられるという仕組みだ。見られているのは休む目的ではなく、その日の職場の状況である。
ただ、「だから理由は一切書かなくてよい」と言い切れるかというと、そこまでではないとも感じた。同じページに引かれた判例には、勤務開始前に出された当日の休暇請求について、事業の正常な運営を妨げるおそれがあるという判断のもとで休暇の理由を尋ね、労働者が理由を明らかにすることを拒んだため請求を認めなかった事例がある。この不承認は、適法な時季変更権の行使として有効と認められている(此花電報電話局事件・最高裁昭和57年3月18日判決)。
私が読み取ったのは、次の二つである。
- 理由の中身で休みの可否を決める仕組みではない
- 急な申請などで、その日の職場の回し方が問題になる場面では、理由が判断の材料になることがある
そのうえで、申請書の書式も運用も会社ごとに違う。自分の勤務先での扱いは就業規則で確認し、迷うことがあれば労働基準監督署や社会保険労務士へ相談したい。
ここから先は制度の話ではなく、私が実際の申請で選んでいる書き方である。
有給休暇と介護休暇では、理由の扱いが最初から違う
調べていて、もう一つ気づいたことがある。同じ「休む」でも、使う制度によって理由の扱いが違う。
年次有給休暇は、目的が労働者の自由とされている。
一方、介護休暇や介護休業は、要介護状態の家族を介護する人のための制度である。誰のどんな用事で使うのかを申し出て取得するもので、理由を伏せたまま使う休みではない。私が今のところ介護休暇ではなく有給休暇を選んでいるのは、無給かどうかだけでなく、申し出が一段重く感じることも理由になっている。
慶弔休暇や病気休暇のように、法律で決まっているわけではない休暇もある。この種の休暇は会社が内容を定められるため、申請のときに事情や証明を求められることがある。
「休みに理由は要らない」と一括りにはできない。どの休暇を使うかで、書く内容は最初から変わる。私が理由欄の書き方で迷っているのは、年次有給休暇の話に限られている。
私は「母の用事の種類」まで書いている

私が休暇の理由欄へ書く言葉は短い。
通院に付き添う日は「母通院」。母の生活に関わる対応なら「母介護」。役場の手続きへ同行する日は「母役場に連れていく」と書く。
書くのは、私がその日に何のために職場を離れるかまでである。
| 書く範囲 | 例 | 書かないこと |
|---|---|---|
| 用事の相手 | 母 | 年齢、詳しい家族構成 |
| 用事の種類 | 通院、介護、役場への同行 | 病名、治療内容、検査結果 |
| 仕事への影響 | 終日不在、数時間不在 | 家族内の細かな事情 |
「母介護」は広い言葉だが、理由欄で病状を説明するための言葉ではない。追加のやり取りを減らし、親に関する用事だと伝えるための表示に近い。
通院の時間が読めない日は、理由欄とは別に終日不在になる見込みを共有する。移動、待ち時間、診察、会計を足すと半日に収まらないため、休み方は理由欄ではなく所要時間から決めている。
理由を具体的に書くことと、休む時間を正確に伝えることも別である。「母通院」と書いただけでは、半日で戻るのか終日不在なのかは分からない。
短い理由と仕事への影響を分けて伝える方が、母の情報を広げずに済む。
「私用」と具体的な理由のどちらがよいかは、職場で変わる
私は具体的に書いているが、同じ書き方を誰にでも勧めるつもりはない。
「私用」で手続きが進み、仕事の調整もできる職場なら、それ以上を自分から書かない選択もある。家族の事情をどこまで共有したいかは、人によって違う。
反対に、理由欄へ「私用」と書くたびに追加説明が必要になるなら、用事の種類だけ先に書いた方が早い場合もある。私は後者を選んでいる。
理由を把握しておきたい、という考え方が職場の側にあることもある。誰がどのくらい休むのかが見えないと、人の配置や仕事の割り振りを決めにくいからだ。私は周りへ伝えるときには、「差し支えなければ書いてください」というお願いの形にしている。書くかどうかを本人が決められる余地は残しておきたい。
申請の形そのものも変わってきた。紙の申請書へ押印をもらいに行く運用に比べれば、電子化された申請は手続きが短く済む。ただし、画面の理由欄が入力必須になっていれば、空欄のまま出すことはできない。書式が変われば、書ける長さも、省ける手間も変わる。
判断するときは、次の三つを分けたい。
- 就業規則や申請書で、何を求められているか
- 不在中の仕事を動かすために、何を共有する必要があるか
- 親と自分のプライバシーとして、どこから先を書かないか
この三つを一つにすると、「詳しく書かなければ休めない」か、「何も言う必要はない」かの二択になりやすい。
私の場合は、用事の種類まで書き、病状は書かない。不在時間と引き継ぎは別に伝える。この線なら、今の職場で申請の往復を増やさずに済んでいる。
ただし、職場の書式や運用が変われば、同じ線でよいとは限らない。申請する側だけで判断せず、疑問があれば担当窓口へ確認する。
追加で聞かれたら、仕事に必要な情報から答える

具体的な理由を書いても、追加で聞かれることはある。
そのとき、私は母の状態を最初から詳しく話すのではなく、仕事に関係する情報から答えるようにしている。
- いつ休むのか
- 終日か、時間単位か
- 戻れる見込みはあるか
- どの仕事を前倒しするか
- 不在中の連絡を誰へ渡すか
- 緊急時に本人へ連絡してよいか
通院なら、終了時刻が読めないため終日休むと伝える。役場への同行なら、予定している時間帯を伝える。これで仕事の調整に必要な部分は見えやすくなる。
それでも親の事情を尋ねられた場合は、「通院への付き添いが必要」「家族の同行が必要な手続き」と、用事が成立する範囲で答える。
詳しい病名や治療の経過まで共有するかは、別の判断である。理由欄へ「母通院」と書いたことが、母の医療情報をどこまでも説明する約束にはならないと考えている。
急な入院などで長く休む可能性が出たときは、短い休暇申請だけでは足りない。介護休業を申請する前に確認することのように、期間、申出、引き継ぎ、復職後を別に相談する必要がある。
一日の休暇と、長期の働き方の相談を同じ理由欄で済ませない。これも、伝える情報を広げすぎないための分け方である。
具体的に書く代わりに、仕事の穴を先に小さくする
私が理由を具体的に書くのは、介護なら何でも理解してもらえると考えているからではない。
休む日は前倒しできる仕事を済ませ、途中の仕事は現在地を残す。自分にしか分からない状態を減らし、不在中に判断が必要なものは相手を決める。
また、母の用事であれば毎回同じ休み方にしない。終了時刻が読める役場の手続きには時間休を使い、待ち時間が読めない通院には終日の有給を使う。
これは他人へ求める規律ではなく、私が自分の休み方を説明できるようにするための線である。「私用」と書く人が仕事を軽く考えているわけでも、具体的に書く人が正しいわけでもない。
理由欄は、親の事情を証明する場所ではない。同時に、職場への不満を書く場所でもない。
私にとっては、その日に職場を離れる理由を短く示し、仕事への影響は別に渡すための欄である。
次に母の用事で休むときも、用事の種類までは書く。病名は書かない。不在時間と引き継ぎは、理由欄の外で伝える。
私の理由欄には、母の病名ではなく、その日に私が離れる理由だけを書く。

