実家を売る前に、不動産査定で確認すること

実家を売る前に、不動産査定で確認すること 親と実家

実家の売却を考え始めると、最初に知りたくなるのは「いくらになるか」である。

私も、60坪を超える母屋に値が付くのか、田舎の土地に買い手がいるのかが気になっている。

高い金額にはならないだろうという見当は、すでについている。

ただ、我が家には母屋だけでなく、母が暮らす離れと大工小屋がある。周辺には、場所や面積を把握しきれていない土地もある。

この状態で「実家を査定してください」と頼んでも、何を含む金額なのか分からなくなる。

私はまだ、不動産会社へ査定を依頼していない。売却を決めたわけでもない。

だからこそ、査定額の高さを比べる前に、査定対象、所有者、今使っている場所、価格の根拠を同じ一枚で確認する準備を整理した。

査定を取ることと、売ると決めることを分ける

実家を査定してもらうと、そのまま売却へ進まなければならないような気がする。

しかし、今の我が家に必要なのは、売却の決断ではない。

売る、貸す、壊す、保留するという選択肢を比べるために、売却した場合の見込みを一つの材料として知ることだ。

四つの選択肢の違いは、実家を売るか・貸すか・壊すかを整理した記事に分けている。

今回の査定では、次の三つを混ぜないようにしたい。

  • 不動産会社が示す査定額
  • 売主が決める売り出し価格
  • 買主との交渉を経て決まる売買価格

査定額を見た時点では、買主も契約条件も決まっていない。

高い数字が出たから売れる、低い数字だから売れないと、その場で結論を出さない。

国土交通省の消費者向け案内では、不動産会社へ仲介を頼む媒介契約の種類が示されている(国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」)。

「実家」を土地と建物へ分ける

私の実家には、三つの建物がある。

  • 60坪を超える二階建ての母屋
  • 母が現在暮らしている平屋の離れ
  • 父の大工道具や古い農機具が残る大工小屋

同じ敷地に見えても、登記上の土地や建物がどう分かれているかは、私の記憶だけでは決められない。

母屋だけを売れるのか。離れで母が暮らし続けながら、一部だけを動かせるのか。大工小屋や進入路を含める必要があるのか。

これらは査定前の希望だけでなく、登記、接道、設備、土地の形を確認して考えることになる。

法務省は、不動産登記を、土地や建物の所在・面積、所有者、抵当権などの状況を公示する仕組みと説明している(法務省「不動産登記のABC」)。

名義や登記記録を確認する順番は、実家の名義を確認しておくべき理由へ分けた。

査定用の一枚には、まず次のように書く。

対象今の使用登記・面積査定に含めるか
母屋法要、荷物の確認確認する未定
離れ母が居住中確認する原則として分けて相談
大工小屋道具、農機具等を保管確認する未定
宅地以外の土地場所・利用状況を確認する未確認を残す別に相談

分からない欄を推測で埋めず、「未確認」と書くことが出発点になる。

書類は全部そろってからではなく、所在を分ける

母が急に入院したとき、私は土地の権利書がどこにあるか分からなかった。

固定資産税の通知、登記に関する書類、建物の図面、保険の証書も、一か所にまとまっていたわけではない。

査定を頼む前に、考えられる書類を全部集めようとすると、そこで止まりやすい。

最初は、次の三つに分ける。

  1. 手元にある書類
  2. あるはずだが、場所が分からない書類
  3. 法務局や市区町村などで確認する情報

土地・建物の登記事項証明書や地図・地積測量図等は、法務局の窓口、郵送、オンライン請求などで取得できる(法務局「各種証明書請求手続」)。

権利書が見つからないことと、所有者を確認できないことを同じにしない。

親の生活動線から書類を探す方法は、実家の書類を探すとき最初に見る場所にまとめている。

不動産会社へ渡す前には、原本が必要か、写しで足りるか、何の確認に使うかを聞く。

登記識別情報の番号、本人確認書類、税に関する個人情報を、最初から一括査定の入力画面やメールへ送らない。

査定に必要な情報と、契約時まで出さない情報を分けておく。

現況は、良く見せるより同じ条件で伝える

実家の母屋の雨どいと外壁の現況を息子が写真に残す様子

査定前に大掃除や修繕をしなければならないと思っていた。

だが、出口を決める前の大きな修繕は、売却条件と合わなければ費用を回収できない。

まず必要なのは、今分かっている現況を同じ条件で伝えることだ。

我が家の母屋なら、次の情報を分ける。

  • 現在は母が同じ敷地の離れで暮らしている
  • 母屋は年に数回の法要や荷物の確認に使う
  • 外壁、雨どい、建具に年月が出ている
  • 最近、床の軋みが以前より大きくなったと感じた
  • 二階の天井裏に生き物の気配があるが、種類と被害は未確認
  • 電気と水道は使用目的があり継続し、LPガスは停止している
  • 家財、仏壇、道具など、引き渡し前に判断が必要な物がある

分かっている事実、私の感覚、専門家の確認が必要なことを分ける。

天井裏の生き物を特定したように書かず、床の状態も自分で安全と判定しない。

国土交通省は、売主が物件の過去の履歴や状態を告知書等で提供するよう示している(国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」)。

査定前のメモも、良く見せる資料ではなく、確認してもらう資料にする。

値が付きにくい地域でも、条件は書き出しておく

実家のある地域は、市町村合併で市になったが、人口が増える動きにはならなかった。

周辺の土地は市街化調整区域にあり、建てられる建物や使い方に制限がある。

宅地以外の土地には農地法の手続きが関わる場合もあり、売れるかどうかを私の判断だけで決めることはできない。

通勤や通学に便利とは言いにくく、車がなければ日常の移動も難しい。

静かで空が広いことは確かな魅力だが、それだけで買主が決まるとは考えていない。

実家へ帰っても、外で人に会う機会は以前より少ない。地域の行事にも、形が変わったものや取りやめになったものがある。

こうした条件は、良し悪しを決めずに、そのまま伝える材料として書き出しておく。

同じ地域に実家を持つ同級生も、土地の扱いで同じ悩みを抱えている。

市の窓口へ相談したが、答えは出なかったと聞いた。

行政と不動産会社では、担える範囲が違うのだと思う。

課税、農地の手続き、空き家の登録は自治体の窓口が扱い、買主を探す仲介は不動産会社が担う。

国土交通省は、自治体が物件を登録する空き家・空き地バンクの総合情報を公開している(国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」)。

査定を頼んでも、対象にならないと言われることはあり得る。

その場合も、そこで話を終わりにせず、次の三つを聞きたい。

  • 扱えない理由は、地域か、土地の種類か、書類の不足か
  • 条件が変われば扱えるのか(範囲を分ける、境界を確認する、家財を出す)
  • 仲介以外の方法や、別の相談先があるか

買い手を近所の農家と想定することも、今は避けている。

農業だけで暮らしている地元の知り合いは、以前より減った。

兼業で続けている同級生からも、機材を買い替えてまで続けるか迷っていると聞いた。

昔は花の栽培が盛んな地域だったが、今は当時ほどの規模ではないように見える。

誰が買うのかを自分で決めず、地域を見ている不動産会社へ聞く。

査定額は、金額より根拠を確認する

母屋・離れ・大工小屋のどこまでを査定対象にするか相談する様子

査定額が二つ並ぶと、高い方に目が向く。

けれども、金額だけでは、何を含み、どの期間で、どんな買主を想定した数字かが分からない。

不動産会社へは、次の点を確認したい。

確認すること聞く理由
査定対象母屋、離れ、大工小屋、土地のどこまでを含むか
参考にした取引地域、時期、面積、建物の状態が近いか
土地と建物の見方古い建物を利用前提、解体前提、現状引渡しのどれで見たか
売却までの想定期間を優先した価格か、条件を待つ価格か
査定から外した要素境界、家財、農地、修繕、解体など未確認の扱い

国土交通省の不動産情報ライブラリでは、取引価格や成約価格、地価、都市計画、防災などを確認できる。

同じ地域でも、面積、形状、前面道路、取引事情によって価格が変わるため、公開情報を実家の価格へそのまま掛けない。

田舎の物件は、掲載されている期間だけで「売れない」と断定できない。この見方は、田舎の空き家の売却可能性を調べた記事で整理した。

査定額が高いか低いかではなく、その説明を家族が後から読み直せるかを見る。

売却価格のほかに、手元に残る条件を見る

査定額がそのまま手元へ残る金額ではない。

売却までの管理、家財整理、境界や登記の確認、仲介に関する費用、契約条件によって、家族が負担することは変わる。

税の扱いも、所有期間、取得経緯、売却条件などで個別に確認する必要がある。

査定前の段階で税額を決めつけず、税務署や税理士へ相談する項目として分ける。

また、売却まで時間がかかれば、固定資産税、保険、電気・水道、見回り、草木の管理は続く。

住宅用地特例と建物を残す判断は、空き家の固定資産税を調べた記事にまとめている。

売却代金で家屋の解体費用を賄えないかとも考えている。

ただし、これは査定額と解体費用の両方を見なければ比べられない。

更地での引渡しを求められた場合、解体費用をどちらが負担するかは契約条件による。

相殺できる前提で予定を組まず、両方の金額が出てから並べる項目にしておく。

査定の一枚には、金額の横へ次の欄を置く。

  • 現状のまま引き渡せる範囲
  • 売主側で先に行う作業
  • 未確認の費用
  • 更地を求められた場合の解体費用の扱い
  • 売却まで続く管理
  • 契約前に専門家へ確認すること

高い査定額でも、前提となる作業が多ければ、家族側の負担は大きい。

低い査定額でも、現状のまま引き渡せる条件なら、比較の仕方は変わる。

母の暮らしと、売却の対象を同じにしない

離れでの暮らしについて母が息子に説明する様子

我が家で最も大切なのは、母が今も離れで暮らしていることだ。

母屋の査定を考える話が、母の住まいを動かす話へ勝手に広がらないようにする。

査定を依頼するときは、最初に次の条件を伝える。

  • 母が使う離れと生活動線は、現時点の査定対象から分けたい
  • 法要、仏壇、家財の扱いは未決定である
  • 現地確認の日程は、母の生活へ配慮して決めたい
  • 査定は判断材料を集める段階で、売却時期は決めていない

本人が暮らしている敷地へ人が来る以上、家族だけの事務作業ではない。

不動産会社の訪問、写真撮影、近所への聞き取り、看板や広告の公開は、査定だけで必要なのかを確認する。

母に説明していない段階で、売却が決まったように見える動きは避けたい。

査定のために必要なことと、媒介契約後の販売活動を分ける。

母にとって、土地と建物は財産である。

父が建てた離れがあり、長く暮らした家がある。

母の世代では、土地を持っていること自体が暮らしの支えでもあった。

ただ、今の相場と自分の土地を照らし合わせる機会は、母にはなかったと思う。

だから査定額をそのまま伝えても、その数字が何を指すのかは伝わりにくい。

伝えるのは金額の高低ではなく、どの土地と建物を、どの条件で見た数字かにする。

母の記憶を否定せず、今の条件だけを分けて話したい。

値段を聞く前に、扱えるかどうかを聞く

私の実家では、査定額を聞く前にやることが残っている。

母屋、離れ、大工小屋、土地を一枚へ書く。

それぞれについて、現在の使用、所有者、面積、接道、設備、家財、未確認を分ける。

その上で、母の暮らしを残したまま、何を査定対象として相談できるかを不動産会社へ聞く。

まだ権利書の場所も、土地と建物の全体も確認できていない。

査定を取っていない今の段階で、売却価格を想像しても答えは出ない。

ただ、「実家はいくらか」という大きな問いを、「どの土地と建物を、どの条件で見るか」へ分けることはできる。

私も子も、この家に住む予定はない。

何も分けないまま次へ渡せば、子は今の私より少ない材料で同じ問いに向き合うことになる。

最初の一社へ渡すのも、個人情報を詰め込んだ資料ではなく、対象と未確認を示す一枚にする。

値が付くかどうかは、まだ分からない。

それでも、どの土地と建物を、どの条件で見てもらうのかは、今日決められる。

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