出張の飛行機が、年々こたえるようになってきた。
若いころは、長い移動も仕事の一部だと思っていた。空港へ行き、飛行機に乗り、現地で打ち合わせをする。疲れはあっても、数日たてば元に戻るものだと考えていた。
ところが50代後半になると、同じ移動でも体の受け止め方が変わってくる。
五十肩で腕が上がりにくい。腰は長く座っていると固まる。飛行機の座席で眠ろうとしても、肩や腰の置き場が決まらない。到着したころには、仕事の前に一つ山を越えたような感覚になる。
病気の話を大げさに書きたいわけではない。ただ、出張という逃げられない予定の中で、自分の体が若いころとは違うことを実感するようになった。
今回は、五十肩と腰痛を抱えながら、出張の飛行機とどう付き合うかを考えたことを書いておきたい。
長時間の飛行機で、体の置き場に困る

飛行機の座席は、体を休める場所のようで、実際にはなかなか休まらない。
短い国内線ならまだよい。乗って、少し本を読んだり資料を見たりしているうちに着く。多少窮屈でも、我慢できる時間だ。
だが海外出張のように、長時間のフライトになると話が変わる。
座席に座った瞬間は、それほど問題を感じない。荷物を上に入れ、席に着き、ベルトを締める。離陸してしばらくは、資料を読んだり、機内の画面を見たりして過ごせる。
つらくなるのは、そのあとだ。
腰が少しずつ固まる。肩の置き場が分からなくなる。肘掛けに腕を乗せても、角度が合わない。背もたれを少し倒しても、首から背中にかけて落ち着かない。
眠ろうとして目を閉じても、腰が気になる。
肩が痛くて寝返りも打てない。
飛行機では、体勢を変えられる範囲が限られている。普段なら立ち上がる、歩く、横になる、机から離れる、といった動きができる。機内ではそれがほとんどできない。
以前は、狭い座席でも何とか眠れた。
今は、眠ろうとするほど体の違和感が気になる。足を組み替える。背中を少し浮かせる。腰に手を当てる。肩を回したいが、隣の人もいるので大きく動かせない。
眠れないと、機内での時間が長く感じる。
以前は、その時間を少し楽しめた。食事のときに軽くお酒をいただき、画面を眺めているうちに眠くなる、という過ごし方もあった。今は、飲むとトイレが近くなる。狭い座席から立ち上がって通路に出るのがおっくうで、水分はほどほどにするようになった。そのぶん、機内での小さな楽しみは少し減った気がする。
立ちにくいぶん、必要なものは手元に置いておきたくなる。老眼鏡、水、薬、耳栓。すぐ使うものを近くにまとめておくと、いちいち立たずにすむ。
ただ、長距離のフライトほど、手元に置きたいものは増える。全部を出しておくと、今度は多すぎて置き場に困る。機体によってはシートポケットも小さく、入りきらない。あれを出したか、しまい忘れていないか。そんな確認が、眠る前にひとつ増える。うっかりどれかを忘れて奥にしまい込むと、それが気になって、また眠れなくなる。
出張の疲れは、現地での仕事だけで生まれるのではない。
移動そのものが、もう体にとっては一つの仕事になっている。
五十肩は、日常より出張で困る

五十肩は、日常生活でももちろん困る。
上着を着るとき、棚の上のものを取るとき、車の後部座席に置いた荷物へ手を伸ばすとき。何気ない動作で、肩に引っかかるような痛みが出る。
ただ、家や会社ならまだ調整できる。
痛い動きを避ける。反対の手を使う。ゆっくり動かす。時間をかける。慣れた場所では、体に合わせて動作を変えられる。
出張先では、それが難しい。
空港では荷物を持つ。保安検査では上着やパソコンを出し入れする。機内では荷物を頭上の棚に上げる。ホテルでは慣れない部屋でスーツケースを開ける。
一つひとつは小さな動作だ。
しかし肩が痛いと、その小さな動作に気を使う。
特に、頭上の棚に荷物を入れる動きは苦手になった。以前なら何も考えずに持ち上げていた。今は、肩の角度を気にしながら、できるだけ無理のない動かし方を探す。
周りの人を待たせたくない。
後ろにも人が並んでいる。
そう思うと、つい急いでしまう。急いだ動きほど、肩にはよくない。分かっていても、場面によってはゆっくりできない。
荷物を下ろすときも同じだ。棚から重いカバンを引き下ろそうとして、焦った拍子に肩を痛めることがある。無理な角度で力を入れた翌日、肩の調子が一段悪くなる。そういうことが、これまで何度もあった。
床に物を落としたときも、ひと苦労になる。腰がうまく曲がらず、肩も伸ばせない。座席の下に転がったものひとつ拾うのに、体をどう動かせばいいか考えることになる。ペンや老眼鏡を落とすと、拾うより先に、どこへ行ったかを探すところから始まることもある。
こういう場面を考えると、出張用のキャリーは見た目より、軽さや取り出しやすさ、持ち上げる回数を減らせるかを重視したくなる。
私は旅先でカバンが壊れて困った経験がある。それ以来、スーツケースはなるべく信頼できるメーカーを選びたいと思うようになった。普段はサムソナイトを使っているが、アメリカンツーリスターもサムソナイトグループの主要ブランドとして扱われている。価格が手頃なぶん過度な期待はしないが、出張用の候補としては無難に見えた。
私が調べた中では、機内持ち込みサイズでフロントオープンのスーツケースも選択肢になりそうだった。
※広告リンクです。価格や在庫、ポイント倍率、サイズ、重量、機内持ち込み条件、保証内容は変わることがあります。購入する場合は、各販売ページと航空会社の規定を確認してください。今のカバンで十分なら、無理に買い替えなくて大丈夫です。
五十肩は、痛みそのものより、動く前に少し身構えることが増えるのだと思う。
この動きは大丈夫か。
荷物を上げられるか。
寝ている間に痛くならないか。
そう考える時間が、出張の中に増えていく。
腰は、座り続けると静かに重くなる
腰痛は、肩よりも静かに来る。
最初は何ともない。座席に座り、背もたれにもたれ、膝の上に資料を置く。しばらくは普通に過ごせる。
ところが時間がたつと、腰の奥が重くなる。
同じ姿勢を続けることで、背中から腰にかけて固まっていく。座り直しても、すぐにまた違和感が戻る。眠ろうとすると、かえって腰の存在が大きくなる。
私の場合、長時間フライトでは腰痛が強く出やすい。
座席でうまく眠れない日もある。現地に着いたとき、頭より先に腰が疲れていると感じる。仕事の前に、まず体を戻す時間がほしいと思うこともある。
腰痛には、原因がいろいろあるのだろう。
私は医師ではないし、自分の状態をここで診断するつもりはない。痛みが続くときや、足のしびれなど気になる症状があるときは、医師に相談するのが安心だ。
ただ、長く座ることが自分の腰に合わなくなっていることは分かる。
会社でも、長い会議のあとに腰が重くなる。車通勤でも、帰宅時に少し固まった感じが残る。実家の草刈りでは、前かがみの姿勢が続くと翌日に響く。
飛行機は、その要素が重なる。
狭い座席。
限られた足元。
動けない時間。
乾いた機内。
到着後の時差や移動。
若いころは、そのまま押し切れた。今は押し切った分だけ、あとで体に出る。
腰の問題は、出張だけの話ではない。
毎日の座り方、運動不足、車通勤、実家作業の負担が、飛行機の中でまとめて顔を出しているように感じる。
小さな道具で、移動の負担は少し変わる
最近は、出張の荷物を体の前提で考えるようになった。
以前なら、仕事道具を中心に準備していた。
パソコン、充電器、資料、名刺、筆記用具、着替え。海外なら変換プラグやパスポート、現地通貨。忘れ物をしないことが中心だった。
今は、そこに体のためのものが加わる。
老眼鏡のスペア。
常備薬。
腰に当てる小さなクッション。
首まわりを支える枕。
肩を冷やしすぎない羽織りもの。
これらは、大きな解決策ではない。持っていけば痛みが消えるわけでもない。だが、あるのとないのとでは、移動の安心感が違う。
機内で腰に当てるものがあると、座り方を少し変えられる。首を支えるものがあれば、眠る姿勢を探しやすい。寒さで肩がこわばるときは、薄い羽織りもの一枚で楽になることがある。
もちろん、荷物は増やしすぎない方がいい。
体のために持っていったものが重くなり、肩や腰の負担になっては意味がない。だから、持つものはできるだけ軽く、小さく、使う場面がはっきりしているものにしたい。
このあたりは、まだ試行錯誤している。
首枕にも、合うものと合わないものがある。腰のクッションも、座席によって感じ方が違う。評判のよいものを買えばそれで終わり、という話ではない。
自分の体に合うかどうかは、実際に使ってみないと分からない。
ただ、若いころのように「何もなくても大丈夫」と考えるよりは、最初から少し備えておく方が今の自分には合っている。
年を取ることは、道具が増えることでもある。
老眼鏡も、血圧計も、薬も、腰の支えも同じだ。自分の体の変化を、気合いだけで扱わないための道具だと思うようになった。
無理をしない移動の段取りを考える

出張では、現地での仕事を優先しがちだ。
何時に着くか。誰と会うか。資料は間に合っているか。移動後すぐに打ち合わせがあるか。そちらばかりを考える。
以前の私は、移動の余白をあまり見ていなかった。
空港へぎりぎりに着く。乗り継ぎ時間を短くする。到着した日に予定を詰める。体が何とかしてくれる前提で、予定を組んでいた。
今は、そこを少し変えたいと思っている。
空港では、早めに着いて歩く時間を作る。
搭乗前に水を買っておく。
機内では、座りっぱなしにしない。
トイレに立てるタイミングで少し歩く。
到着後に、すぐ重い予定を入れすぎない。
どれも特別なことではない。
長距離移動では、足を動かすことや、ときどき立つことが大事だとされている。CDCの旅行者向け情報でも、長時間座ったままになる旅行では血栓のリスクに注意し、足を動かすことや医師への相談が勧められている。
私は血栓の専門的なリスクをここで語れる立場ではない。
ただ、同じ姿勢で長く座ることが、体にとって負担になることは実感している。腰のためにも、足のためにも、ずっと同じ姿勢で固まらないようにしたい。
座席も、可能なら考える。
通路側なら立ちやすい。乗り換えのある出張なら、重い荷物を減らした方が肩にやさしい。荷物を預けるか、機内持ち込みにするかも、仕事の都合だけでなく体の都合を入れて考える。
少し前なら、そんなことを気にする自分を弱く感じたかもしれない。
今は、そうは思わない。
出張先できちんと仕事をするために、移動で消耗しすぎない段取りを組む。これは甘えではなく、必要な準備なのだと思う。
仕事には、自分の都合だけでは動かせない予定がある。
それでも、前日に睡眠を削らない、帰国翌日に重い移動を重ねない、実家作業と出張を同じ週末に詰めすぎない、といった調整ならできることがある。
若いころは、体調は予定の隙間で何とかするものだと思っていた。今は、仕事を続けるためにこそ、体の事情も予定表に入れておく必要があると感じている。
若いころと同じ出張を目指さない
出張の飛行機がつらくなったからといって、すぐに出張をやめられるわけではない。
仕事で必要なら行く。海外に行くこともある。長時間の移動を避けられない場面もある。
特に海外では、体調を崩しても、日本のように気軽に病院へ行けるとは限らない。言葉も勝手も違う土地では、体のことで普段より慎重になる。慎重にならざるを得ないぶん、気を張る場面もいつもより多い。
だからこそ、若いころと同じ出張を目指さないことが大事なのだと思う。
昔のように、夜遅くまで動いても翌朝平気。
荷物を肩にかけて長く歩いても大丈夫。
飛行機で少し眠れば回復する。
そういう前提は、もう少しずつ合わなくなっている。
今の体で、どうすれば仕事を続けられるか。
移動で消耗しすぎないために、何を軽くするか。
どこで立ち上がり、どこで休むか。
どの道具を持ち、どの予定を詰めすぎないか。
考えることは増えた。
だが、それは後ろ向きなことばかりではない。自分の体を雑に扱わないための確認でもある。
五十肩は、いつかよくなる時期もあるのかもしれない。腰痛も、整え方次第で楽になる部分はあるのだろう。どちらも自己判断で無理をせず、必要なら医師や専門家に相談する。
そのうえで、日々の移動や出張の段取りを少しずつ変えていく。
私はまだ働いている。母のところへも通う。実家のことも、次の世代へ先送りしないと決めている。そのためには、飛行機の中で無理を重ねるのではなく、移動も含めて自分の体を扱う必要がある。
派手な健康管理ではない。
答えも、まだ出ていない。ただ、出張カバンの中身と、予定の組み方と、機内での過ごし方を少し変えるところから始めている。
定時のあとの時間を使って、少しずつ自分の体と仕事の続け方を整えていく。

