エンディングノートとは何か──何を書き、いつ書くのか調べた

エンディングノートとは何か──何を書き、いつ書くのか調べた 人生後半

エンディングノートという言葉を、少し前までは自分より上の世代のものだと思っていた。

親が元気なうちに書いてもらうもの。相続や葬儀で家族が困らないようにするもの。そんな印象が強かった。

だが、親の年金、保険、相続税、葬儀費用、実家の固定資産税を調べているうちに、考え方が変わってきた。

親に書いてもらう前に、まず自分がエンディングノートというものを分かっていない。何を書くのか、そもそも必要なのか、いつ書くものなのか。名前は知っていても、中身はほとんど知らなかった。

分かっていないことを、親に自然に聞けるはずがない。

そう思って、まずはエンディングノートとは何かを調べてみることにした。私自身、得意な分野ではない。だから今回は、専門家として教える記事ではなく、同じように迷っている人と一緒に一つずつ確かめていく記事にしたい。

やってみると、これは死ぬ準備というより、家族が迷わないための地図作りに近いと感じた。

今回は、エンディングノートとは何か、何を書き、必要なのか、いつ書くのかを、調べて分かった範囲で整理しておきたい。


そもそもエンディングノートとは何か

エンディングノートと遺言書の役割の違いを窓際の机で整理するノートと書類

まず、言葉の意味を確かめた。

エンディングノートとは、人生の終わりに備えて、自分の思いや、残される家族に必要な情報を整理して書いておくノートのことだ。終活ノートと呼ばれることもある。

大事なのは、これが遺言書とは別のものだという点だ。

政府広報オンラインの遺言書に関する説明では、一般的に用いられる遺言書として、自分で手書きする自筆証書遺言と、公証人が関わる公正証書遺言が紹介されている。法務省には、自筆証書遺言書を法務局で保管する制度の案内もある。

遺言書は、法律で定められた形式に沿って書かなければ効力を持たない。書ける内容も、財産を誰にどう残すかといった範囲が中心になる。

一方で、エンディングノートには決まった形式がない。

書く内容も自由だ。通帳や保険の場所、契約しているサービス、医療や介護の希望、葬儀の考え方、親戚や友人の連絡先、家族へのメッセージ。どれを書いても、書かなくてもよい。

その代わり、エンディングノートには法的な効力がない。

たとえば「この財産は誰に渡したい」とノートに書いても、それだけでは遺言書のような法的な力は生じない。財産を法的に分けたいなら遺言書、家族が手続きや判断で迷わないための手がかりを残したいならエンディングノート、と分けて考えるのが分かりやすかった。

私は最初、この二つを同じものだと思っていた。

調べてみて、役割がまったく違うと分かったのは、最初の収穫だった。

何を書けばいいのか

エンディングノートに書く情報を収納箱で項目ごとに分ける様子

次に気になったのは、では実際に何を書くのか、ということだ。

決まりはないと分かったが、白紙のノートを前にすると、かえって手が止まる。調べてみると、よく挙げられる項目には、だいたい共通したまとまりがあった。

  • 自分に関する基本情報(本籍、家族構成、緊急連絡先など)
  • 資産の情報(預貯金、保険、証券口座、不動産、借入など)
  • 契約しているサービス(携帯、ネット、公共料金、サブスク、クレジットカード)
  • デジタル情報(スマホやパソコンの扱い、各種アカウントの存在)
  • 医療や介護の希望(延命治療、過ごしたい場所、任せたい人)
  • 葬儀やお墓の希望(規模、知らせたい人、宗教やお寺との関係)
  • 家族や大切な人へのメッセージ

こうして並べると、財産の一覧だけでは足りないことが分かる。

私は最初、エンディングノートに何を書くかを考えたとき、お金のことばかり思い浮かべた。親の相続税や口座凍結を調べたあとでは、財産の一覧がないことの不安も分かる。

だが、それだけでは家族は動けない。

たとえば、スマホのロックが解除できないだけで、連絡先や写真、契約中のサービスの確認が難しくなる。ネット銀行や証券口座、メールアドレスも、本人以外には見えにくい。

葬儀の希望も同じだ。大きくしたいのか、小さくしたいのか。誰に知らせたいのか。お寺との関係はどうなっているのか。こうしたことは、財産を分ける話とは別の困りごとになる。

全部を一度に書く必要はないのだと思う。

自分の場合、まず書けそうなのは連絡先と契約先だった。誰に知らせてほしいか。どんな契約があるか。ここは調べなくても手元の情報で埋められる。お金や医療の希望は、そのあとでよい。

何を書くかに正解はない。ただ、家族が最初に困る順に書くと決めれば、手は動き出す。

エンディングノートは必要なのか

書く内容が見えてくると、次に迷うのは、そもそも必要なのか、という点だ。

法的な効力がないなら、書く意味は薄いのではないか。最初はそう考えた。

だが、自分の経験を思い返すと、見方が変わった。

私はこれまで、父の葬儀、母の入院、保険の見直し、実家の名義確認、墓じまいの検討を通して、情報が一か所にまとまっていないことの不便さを感じてきた。

入院時に通帳や保険証書を探した。土地の権利書の場所が分からなかった。親戚や近所の連絡先を、あとから整えた。配食やヘルパー、固定資産税、保険の引き落としを確認した。

一つひとつは、その場で何とかしてきたことだ。

だが、何とかできたから問題がなかったわけではない。次も同じように探せるとは限らないし、私自身が年を取れば、判断する力も体力も今より落ちる。

エンディングノートは、法的な決定書ではない。

だが、家族が迷ったときに見る地図にはなる。私はそう整理することにした。

地図なら、完璧でなくてもよい。道が一本でも書いてあれば、何もないより動きやすい。古くなれば書き直せばよい。まずは、家族が最初に見る場所を作ることが大事なのだと思う。

もう一つ、書く側にとっての意味もあると気づいた。

医療や介護、葬儀の希望を書こうとすると、自分がどう過ごしたいのかを一度考えることになる。答えが出なくても、何が不安で、何を家族に任せるのが心配なのかは見えてくる。書くこと自体が、考えを整理する時間になる。

必要かどうかは人によると思う。ただ、家族の手続きを少しでも軽くしたいなら、書いておく価値はあると感じた。

いつ、どう書くものなのか

電話のそばでエンディングノートに一つだけ確認する準備

最後に、いつ書くものなのかを調べた。

これは意外だった。かつては終末を意識した年代のものという印象が強かったが、今は四十代、五十代の働き盛りから書き始める人も増えているという。定年退職を機に書き始める人の話も聞く。

理由は分かる気がした。

エンディングノートは、健康で、判断がはっきりしているうちに書き始めた方がよい。もしものときが来てからでは、本人が書けない。だから、書ける今のうちに、少しずつ手をつけておくものらしい。

何歳から書いても問題はない。書き直しも自由だ。だからこそ、完璧を目指して先延ばしにするより、早めに一度書いておく方が向いている。

書き方についても、決まりはなかった。

市販のエンディングノートを使ってもいいし、普通のノートに項目を書き出してもいい。パソコンで作る人もいる。形式より、家族が見つけられて、読めることの方が大事だと感じた。

市販の形式から始めたい場合は、どんな項目が用意されているかを確認する入口として、コクヨのエンディングノートを見る方法もある。すべての項目を埋める前提ではなく、自分や家族に必要な欄を知るための参考として考えたい。

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そのうえで、いくつか気をつけたい点も見えてきた。

  • 全部を一度に書こうとせず、書けるところから書く
  • 内容は変わるので、更新できる形にしておく
  • 保管場所は家族に分かるようにしつつ、暗証番号などは丸見えにしない
  • 大事な情報の「場所」を書き、中身そのものは慎重に扱う

私が今の時点でよいと思うのは、まず一ページだけ書くやり方だ。

自分に何かあったとき、家族が最初に見てほしいページ。そこに、連絡してほしい人、主な契約先、大事な書類の場所、かかりつけ医、保険の有無、実家関係のメモを書く。詳しい内容は別ページでよい。最初の一ページには、家族が次にどこを見るかだけを書く。

それだけでも、何もない状態より前に進む。

調べてみて、親との会話の入り口が見えた

エンディングノートとは何かを調べて、いちばんよかったのは、親に聞きたいことが具体的になったことだ。

以前は、親が元気なうちに話すべきこと、という大きなかたまりで考えていた。

だが、それでは話しにくい。

いざ母を前にすると、簡単ではない。まだ一人で暮らしている母に、もしものときの話をする。葬儀はどうしたいか、通帳はどこにあるか。言葉だけ並べると、こちらが先回りして終わりを準備しているように聞こえてしまう。

母を責めたいわけでも、急がせたいわけでもない。

ただ、エンディングノートの項目に沿って考えると、聞くことを小さく分けられると気づいた。

通帳の場所を教えてほしい。保険証書を一緒に見たい。お寺の連絡先を確認したい。もしものときに知らせたい人を聞きたい。仏壇や墓について、今どう考えているか聞きたい。

ここまで分けると、少し話しやすくなる。

一度に全部聞く必要はない。実家へ行ったとき、書類を片づける流れで一つだけ聞く。通院の帰りに、保険証書の場所だけ確認する。お寺の話が出たときに、連絡先をメモする。

母には母の時間がある。

父を送ったあとの暮らし、がんの手術、ストマのある生活、免許返納、離れでの一人暮らし。母は母なりに、少しずつ自分の生活を変えてきた。そこへ私が一気に終活の話を持ち込めば、負担に感じるのは自然だと思う。

だから、まず自分が調べる。

そして、自分でも書けるところから書いてみる。書いてみて、分からなかったところだけを、母に少しずつ聞いていく。

エンディングノートは、死後のためだけにあるのではない。

親が生きている今、家族が話すための準備にもなる。私はそこに、いちばん意味を感じ始めている。

答えはまだ出ていないが、エンディングノートとは何かを調べたことで、次に何を書き、何を聞くかが少し見えてきた。定時のあとの時間を使って、少しずつ家族に残す情報の整理を進めていく。

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