介護の役割分担表を作ってみた──家族だけで抱えないために

介護の役割分担表を作ってみた──家族だけで抱えないために 親の老い

親の介護で、誰が何をするのか。

私にはきょうだいがいない。母の通院、書類、買い物、実家の管理を家族内で均等に分けようとしても、人数を増やすことはできない。

けれど、今の母の暮らしを、私一人で支えているわけでもない。本人が続けていることがあり、配食、ヘルパー、医療機関、介護の相談先がそれぞれの場所で関わっている。

そこで、役割分担を家族の人数で割るのではなく、日常の用事、変化があったときの判断、緊急時の連絡に分けて表にしてみた。主担当だけでなく、代わりの手段と、まだ決まっていない部分も見えるようにした。


分担は、家族の人数で均等に割ることではない

役割分担と聞くと、家族の名前を横に並べ、通院はこの人、買い物はこの人、書類はこの人、緊急時はこの人と、用事を均等に配る形を想像する。

家族が多く、近くに住み、時間も体力も同じなら、それで回ることがあるかもしれない。だが実際には、住む距離、仕事、健康、家庭の事情が違う。私のように一人っ子なら、きょうだいへ分けることもできない。

だからといって、すべてを自分の役割にするのも違うと思う。

母は自分でできることを続けている。昼食は配食が入り、買い物の一部はヘルパーにお願いしている。通院や書類には私が関わり、医療の判断は医療機関へ、介護サービスの調整はケアマネジャーなどの専門職へ相談する。

この配置も、一つの分担である。

家族の仕事を均等にすることより、必要な用事に担当とつなぎ先があることの方が大切だ。

また、役割の数だけで公平さは測れない。短い電話を毎日続ける役と、年に数回でも一日がかりの通院へ付き添う役では、負担の種類が違う。近くに住む人へ急な対応が集まり、遠くに住む人が書類や予約を担う家庭もある。

表を作る目的は、誰が多くしているかを比べることではない。

どこに負担が集まり、どこに代わりがないかを見つけることだと思う。

人ではなく、暮らしの場面から書き出す

主担当・代替・家族外の相談先・未決定を四つの欄に整理する50代後半の男性

最初に家族の名前を置くと、できそうな人へ用事が集まりやすい。

そこで、先に暮らしの場面を書き出した。

  • 食事、買い物、掃除など、日常を続けること
  • 通院、薬、介護サービスなど、予定して動くこと
  • 郵便物、契約、支払いなど、期限を確認すること
  • 電話がつながらない、転倒、急な入院など、予定外に起きること
  • 草刈り、修繕、防災など、実家を保つこと
  • 本人の希望や支援の変更など、家族だけで決めないこと

そのうえで、用事ごとに四つの欄を作る。今、主にしている人や仕組み。その人が動けないときの代わり。家族の外で相談できる先。まだ決まっていないこと。

「未決定」の欄を作るのが大事だった。

空欄があると、つい誰かの名前で埋めたくなる。だが、実際に頼めるか確認していない人を書いても、いざというときには動かない。

代わりを頼むつもりの相手には、先に一言聞いておきたい。急なときに連絡してよいか、行けない日はどう伝えるか。断られたなら、それも分かったこととして書いておく。事業所やサービスなら、対応できる曜日と時間、申し込みから利用までにかかる日数を確かめておく。

確かめていないところは、未決定のままにする。

それが、次に家族や専門職へ相談する項目になる。

主担当、代替、相談先、未決定を一枚にする

役割分担表は、次のような形にした。

暮らしの場面今の主担当・仕組み動けないときの代替家族外の相談先未決定・見直しの合図
食事・買い物本人、家族、配食、ヘルパーなど宅配、別日の支援、家族以外の方法ケアマネジャー、事業所食欲や買い物方法が変わった時
通院・薬本人、付き添う家族予約変更、ほかの送迎手段医療機関、薬局、ケアマネジャー通院回数や服薬が変わった時
書類・支払い本人、確認する家族期限だけ共有、相談先へ確認市区町村、保険者、契約先郵便物がたまる、期限を逃す時
連絡・緊急対応本人、最初に連絡を受ける人次の家族、近所、専門窓口消防、警察、医療・介護の窓口電話がつながらない時の順番
家・敷地の管理本人、訪問する家族業者、地域の相談先自治体、保険会社、事業者家族だけでは安全にできない時
支援の変更本人と必要な家族日を改めて確認ケアマネジャー、地域包括支援センター本人の希望と現状が合わない時

この表は、家族全員へ同じ仕事を配る表ではない。一つの用事に、主担当と代わりの手段を置く表である。

たとえば、通院付き添いの主担当が私でも、私が必ず行くと固定する必要はない。予約を変えられるのか、別の移動手段があるのか、医療機関へ先に相談すべきなのかを確認しておく。

買い物も同じである。家族が行く日、本人が選ぶ日、ヘルパーに頼む日を、どれか一つに統一しなくてよい。本人の楽しみと生活の安定を残しながら、家族が行けない日の方法を持っておく。

施設を考える前に家で増やせる支援を整理したときも、家族が動けない日を基準にすると、暮らしの弱い場所が見えた。役割分担表でも、平常時だけでなく、主担当が不在の日を一度たどってみる。

代替の欄が空いたままの用事が、今いちばん替えのきかない場所になる。

外部サービスは、家族の代わりではなく役割の一部にする

家族が訪問できない雨の日に配食と買い物を受け取る高齢の母

家族の分担表に、配食、ヘルパー、医療機関、地域包括支援センターを書くことには、最初は少し違和感があるかもしれない。家族の役割を外へ押し出すように見えるからだ。

だが、家族だけで介護を完成させる必要はない。

厚生労働省の介護休業の案内では、介護休業を、自分が介護を続けるための休みではなく、仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間として説明している。その準備には、市区町村や地域包括支援センターへの相談、介護サービスの手配とともに、家族の間で分担を決めることが挙げられている。

分担を決めることは、介護の前段階ではなく、介護そのものの一部だと考えてよいのだと思う。

とはいえ、家族がしていることを、いきなり全部サービスへ替えるわけではない。家族にしかできないことと、家族でなくても続けられることを分ける。

本人の気持ちを聞く。医療や介護の説明を一緒に確認する。大きな判断を急がず、本人と話す。こうしたことは家族の大切な役割になり得る。

一方、定期的な買い物、食事の用意、専門的な介助、医療的な判断までを家族が抱える必要はない。適切な相手へつなぎ、使い始めたあとに本人の暮らしへ合っているかを見ることも、家族の役割の一つになる。

表に家族外の相談先を書いておけば、困ったときの行き先を、その場で探さずに済む。

日常の担当より、変化と緊急時の順番を決める

介護の役割分担は、毎週の予定だけでは足りない。

予定どおりなら回っていても、親の体調、家族の仕事、天候、サービスの休みで形は崩れる。

特に決めておきたいのは、変化があったときの連絡順である。

電話がつながらない。転んだ。急に入院した。薬の内容が変わった。家の設備が壊れた。こうしたとき、最初に誰が連絡を受けるのか。その人が出られなければ、次は誰か。家族で判断せず、どの専門窓口へつなぐのか。

緊急時の連絡先を親と共有する記事では、電話番号の一覧だけでなく、家族、近所、医療、介護へつなぐ順番を整理した。役割分担表には、その連絡順を詳しく書き写す必要はない。

「緊急連絡表を見る」「家族に出なければ次の連絡先へ」「医療判断は医療機関へ」。この程度の短い指示と、連絡表の保管場所を記しておけばよい。

役割を細かく書きすぎると、状況が変わったときに使いにくい。緊急時に優先したいのは、決められた人を待ち続けることではなく、必要な窓口へ早くつなぐことである。

情報共有は、役割に必要な範囲にとどめる

役割分担表の代わりがいない項目を専門職へ相談する母と息子

役割を分けると、情報も共有したくなる。

病名、薬、通院先、介護認定、口座、保険、家の鍵、緊急連絡先。親の暮らしには、扱いに注意が必要な情報が多い。

しかし、家族だから全員がすべてを知る必要はない。

通院の送迎をする人に、預金残高まで伝える必要はない。近所の人に、詳しい病歴や薬の一覧を渡す必要もない。ヘルパーへ頼む内容も、契約やケアプランの範囲を家族の判断だけで広げることはできない。

役割分担表へ書くのは、その役を果たすために要ることだけでよい。

医療のことなら、緊急時に必要な概要と、詳しい書類の保管場所を分ける。お金に関わることなら、番号や残高ではなく、通知が届く場所と確認する人を書く。家の鍵を預ける場合は、本人の同意、預ける相手、使う場面、返却方法まで決めておく。誰に何を伝えるかは、母が自分で決められるうちに、母と決めておきたい。

また、役割を引き受ける側にも確認がいる。

近くに住んでいるから、いつでも行けるとは限らない。家族だから、夜間も連絡を受けられるとは限らない。頼まれる人の仕事、健康、家庭の事情も尊重する必要がある。勤務との折り合いは気持ちだけで決まらないので、介護休業や介護休暇の制度を先に確認しておくと、引き受けられる範囲を具体的に話せる。

役割表は、本人を管理するためのものでも、家族を拘束するためのものでもない。

本人と支える人の両方が、無理のある期待を減らすための確認表である。

表は、負担が偏ったときに相談する材料になる

役割分担表を作っても、負担が完全に均等になるわけではない。

親の近くに住む人へ、急な対応が集まることがある。書類が得意な人へ、手続きが重なることもある。一人っ子なら、家族内の主担当が一人になる場面も多い。

そのとき、「自分が主担当だから続けるしかない」で終わらせないために、頻度と代替の欄を見る。

予定していた訪問が増えている。仕事中の連絡が増えている。通院付き添いのために休む回数が増えた。家族が体調を崩しても代わりがいない。未決定の欄が、前に見たときのまま残っている。

こうした変化は、役割を見直す合図だと思う。

地域包括支援センターへ相談する前の整理では、本人の困りごとと、家族が補っていることを分けて伝える必要を考えた。役割分担表があれば、その説明を短くできる。今している人、代わりがいない用事、決められないまま残っている項目を、そのまま見せればよい。

厚生労働省が示す地域包括ケアシステムは、住まい、医療、介護、予防、生活支援を地域で一体的に提供する考え方である。保険者である市町村などが、地域の実情に応じて作り上げるとされている。家族の表で埋まらない欄には、はじめから地域の側で受ける前提のものが含まれている。

本人の状態や希望が変われば、担当は固定せずに見直す。家族が動けなくなっても続く形へ、少しずつ替えていく。

私の場合、きょうだいへ役割を分けることはできない。それでも、本人、家族、外部の支援、地域の相談先を一枚に置けば、誰か一人の頭の中だけで抱える形ではなくなる。

まず一枚に書き出し、代わりのいない用事に印を付ける。次に相談へ行くときは、その印の付いた行だけを持って行く。

定時のあとの時間を使って、少しずつ家族だけで抱えない介護の分担を整えていく。

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