一人暮らしの親に、早めにヘルパーを頼むということ|義父に教わったこと

一人暮らしの親に早めにヘルパーを頼むということ 親の老い

母にヘルパーを頼むまで、振り返ると5年ほどかかった。

その間、私は「自分が行けば何とかなる」と考えていた。介護保険の区分が低ければ、頼めることも少ないと思い込んでいた。

その考えを動かしたのは、妻の父だった。

妻の父は、妻の母が亡くなったあと、早い段階で自分からヘルパーを頼んだ。視力をほとんど失っていても、子どもたちへ日々の家事を任せきりにせず、外の手を暮らしに入れた。

母がヘルパーを頼むまでの経緯は、母にヘルパーを頼むまで5年かかった話に分けている。

この記事では、妻の父の選び方から私が学んだことと、訪問介護を調べ直して分かったことを整理したい。


義父の一言で、「家族が全部する」前提が動いた

ある日、妻の父から母の様子を尋ねられた。

妻の父は、私が定期的に実家へ通っていることを知っていた。話を聞いたあと、「ヘルパーを頼んだらどうか」と勧めてくれた。

ちょうどそのころ、私は海外出張が続いていた。

実家へ行けない日が増え、電話だけでは確かめきれないこともあった。自分が行くことを前提にした支え方が、仕事の予定一つで弱くなると気づき始めていた。

それでも動けなかったのは、何をどこへ相談すればよいのか分からなかったからだと思う。

妻の父は、現役時代に総務の仕事をしていた。社会保険労務士の資格を持ち、地域で民生委員も務めていた。制度や手続きに詳しく、外のサービスへ相談することを特別なことだと考えていなかった。

身近に、すでにヘルパーを頼んでいる人がいる。

しかも、「限界になったから仕方なく」ではなく、今の暮らしを続けるために自分で選んでいる。

その事実が、私には制度の説明以上に分かりやすかった。

義父は、困り切る前に家事を外へ分けた

妻の父は、妻の母を亡くして間もないころ、自分でヘルパーの手配を決めた。

子どもたちは、何かあれば駆けつけられる距離にいる。それでも、掃除、洗濯、買い物といった日々の家事まで、すべて家族に背負わせたくなかったのだと思う。

今は毎日1時間ほど、掃除や洗濯、食材の買い物をお願いしている。

妻の父は、視力をほとんど失っている。慣れた家の中は記憶を頼りに移動でき、会話や判断もしっかりしている。しかし、買い物や掃除を一人で終えるのは難しい。

できないことを全部家族へ渡すのではなく、繰り返し必要になる家事を外の手へ分けた。

家族は、本人の意思を聞くことや、急な変化に対応することへ力を残せる。

二つの一人暮らしで支え方が違う理由は、義父と母、それぞれで違ったことにも書いた。

妻の父を見ていると、早めに頼ることは、家族から離れることではないと分かる。

家族が長く関われるように、毎日の家事を一部だけ外へ渡すことだった。

訪問介護は、時間だけを選ぶ家事代行ではなかった

以前の私は、介護保険の区分が低ければ、ヘルパーにはほとんど頼めないと思っていた。

調べて最初に目に入ったのは、訪問介護の時間区分だった。

厚生労働省の介護サービス情報公表システム「訪問介護」では、訪問介護を二つに分けている。

食事・排せつ・入浴などの「身体介護」と、掃除・洗濯・買い物・調理などの「生活援助」だ。生活援助の時間区分には「20分以上45分未満」と「45分以上」が示されている。

私は以前、この区分を「短い時間の商品を選べる」という意味に近く受け取っていた。

だが、それでは単純すぎる。

時間区分は介護報酬を計算するための区分であり、好きな家事をその場で自由に追加できるメニューではない。何をどのくらい利用するかは、本人の状態、できること、家族の状況、本人と家族の希望を確認し、ケアプランに位置づけて決めていく。

介護保険の対象になる生活援助は、本人の日常生活を支えるために必要なものだ。家族分の家事や大掃除、庭仕事など、本人の援助から外れることまで何でも頼めるわけではない。

また、要介護1以上と要支援1・2では相談後の流れが異なる。厚生労働省のサービス利用までの流れで確認できる。

要介護1以上の在宅サービスは、居宅介護支援事業者のケアマネジャーへ依頼する。要支援1・2の介護予防サービスは、地域包括支援センターへ相談する流れだ。

認定前や、どこへ相談すればよいか分からない段階なら、親が住む地域の市区町村窓口や地域包括支援センターが入口になる。

大切なのは、先に時間を選ぶことではなかった。

「本人の暮らしで、今どこが回りにくいのか」を伝え、使える制度や地域の支援を一緒に確認することだった。

家族とヘルパーの役割を、先に分けて考える

ヘルパーへ相談するとき、頼みたい家事だけを並べると、家族が何を担うのかが見えにくい。

妻の父の暮らしを見て、私は役割を次のように分けて考えるようになった。

見ること外の手へ相談すること本人・家族が担うこと
繰り返す家事掃除、洗濯、本人の買い物など、ケアプランに位置づけた生活援助好みや置き場所を伝え、必要に応じて内容を見直す
本人の意思困りごとを聞き、できる方法を一緒に考えてもらう何を続けたいか、何をされたくないかを決める
急な変化訪問時に気づいた変化の共有方法を事前に確認する連絡を受けたあとの受診や家族間の調整を考える
家族の負担家族が繰り返し補っている部分を相談する家族にしかできない用事と、代われる用事を分ける
利用後の調整事業所やケアマネジャーへ変更を相談する本人に合っているか、無理がないかを確かめる

この表は、すべての家庭で同じ分担にするためのものではない。

家族が全部するか、ヘルパーに任せるかという二択を避けるための整理だ。

妻の父の場合、日々の家事は外の手へ分けても、自分で決める部分は手放していない。家族も、必要なときに会い、話し、判断を支える役割を残している。

サービスを増やす時期の考え方は、介護サービスを増やすタイミングに分けている。

035で書きたいのは、増やす前の入口だ。

家族が疲れ切る前に、繰り返し必要なことを一つだけ外へ分けてみる。その発想を、妻の父から教わった。

「他人が家に入る不安」を、曖昧なままにしない

ヘルパーを頼むとき、家に他人が入ることへの不安は避けられない。

妻の父はほとんど目が見えない。知らない人が家へ入り、台所や部屋で作業することに、最初は不安があったと聞いている。

その不安が小さくなったのは、家族が実際にヘルパーと会い、人柄や関わり方を知ったからだった。

これは妻の父の事業所での経験であり、どの事業所でも同じ手順になるとは限らない。

だからこそ、利用前に確認したいことを具体的にしておく。

誰が訪問するのか。

担当者が変わるときは、どう連絡が来るのか。

鍵を預ける必要があるなら、どう管理するのか。

買い物のお金やレシートを、どう受け渡すのか。

予定変更や休止は、誰へいつまでに連絡するのか。

訪問時に気になる変化があった場合、誰へ知らせてもらうのか。

貴重品や個人情報を出したままにしないことも、家族側で整えておきたい。

不安を「何となく心配」のまま抱えると、相談そのものを先送りしやすい。一つずつ確認事項に変えると、本人が納得できる条件も見えやすくなる。

合わないと感じたときも、本人だけで我慢せず、ケアマネジャーや事業所へ相談してよい。

毎日の会話は、サービスの向こう側にあった

夕方のリビングに残された湯のみと買い物袋

妻の父を見ていて印象に残るのは、ヘルパーの訪問を家事の助けとしてだけ受け取っていないことだ。

妻の父は、人と話すことが好きだ。

毎日わずかな時間でも、誰かと言葉を交わせる。その時間を楽しみにしている。

掃除や買い物という用件の向こうに、人の出入りがあり、会話がある。訪問を重ねる中で、いつもと違う様子に気づいてもらえることもある。

ただし、会話や安否確認だけを目的に訪問介護を利用できるという意味ではない。ヘルパーが家族の代わりに体調を保証してくれるわけでもない。

ケアプランに位置づけられた支援を受ける中で、顔を合わせる人が増えた。その結果として、妻の父の暮らしに会話と外の目が残った。

私には、その順番が大切に見える。

ヘルパーを見守り役として一方的に期待するのではなく、頼んだ支援を続ける中で、本人とヘルパーの関係が少しずつできていく。

妻の父の場合は、その関係が暮らしの張りにもなっている。

早めに頼むとは、すぐ契約することだけではない

妻の父から学んだ「早めに頼む」は、心配を感じたらすぐ契約する、ということではない。

本人ができていることを確認する。

繰り返し家族が補っていることを一つ書く。

親が住む地域の相談先を調べる。

何を続けたいか、本人に聞く。

訪問する人や、お金・鍵・連絡の扱いを確認する。

小さく始め、合っているかを見直す。

契約の前にも、できる準備はある。

妻の父は、困り切って家族が動くのを待つのではなく、自分の判断で外の手を入れた。その姿を見たから、私は母のことでも相談へ進むことができた。

頼ることは、できないことを認めるだけではない。

本人が一人暮らしを続け、家族も無理なく関わり続けるために、役割を組み直すことだと思う。

定時のあとの時間を使って、親の暮らしに外の手を入れる準備を、できるところから整えていく。

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