老人ホームの資料を見ると、最初に目が向くのは月額費用だと思う。
家賃、管理費、食費をまとめた数字があり、その金額を母の年金と比べたくなる。私も以前は、毎月払えるかどうかが施設費用の中心だと考えていた。
だが、母の暮らしを実際に移すつもりで項目を並べると、月額欄だけでは足りない。入居時に必要なお金、月額に含まれない介護や医療、日用品、家族の移動、退去時の費用がある。実家の支出もしばらく残る。
今回は費用相場を出すのではなく、施設から受け取った料金表を家族の年間表へ移すための確認項目を整理した。
月額費用の大きな数字だけでは、支払総額が分からない
施設の種類が違えば、費用の組み立て方も変わる。種類ごとの目的や入居条件は介護施設の種類と費用で調べたので、ここでは料金表の読み方に絞る。
介護保険施設では、介護サービス費の自己負担に加え、居住費、食費、日常生活費などがかかる。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、住まいの費用と、施設内または外部事業者から受けるサービスの費用を分けて見る必要がある。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムの利用料案内でも、この内訳が示されている。介護サービス費の自己負担は一割から三割で、そこへ居住費や食費が加わる。所得などによる負担軽減もあるため、対象と申請方法は自治体へ確認する。
資料の「月額」には、何が含まれているかが施設ごとに違う。
- 家賃または居住費
- 管理費または共益費
- 食費
- 水道光熱費
- 生活支援サービス費
- 介護保険サービスの自己負担
このうち一部だけを合計して月額と表示している場合もあれば、別の名称でまとめている場合もある。
比較するときは、月額の高低より先に、同じ項目を比べているかを見る。数字の下にある注記と別料金表を読まなければ、支払総額は見えない。
入居時のお金は、前払金と敷金を分ける

施設へ入る前には、まとまった支払いが必要になることがある。
有料老人ホームでは、将来の家賃などを前払いする方式と、毎月支払う方式がある。入居一時金、入居金と呼ばれるお金が、何の前払いなのか。償却はいつから始まり、早く退去した場合はいくら戻るのか。月額を低く見せるための支払いになっていないかを確かめる。
厚生労働省の高齢者向け住まいを選ぶ前の消費者向けガイドブックでは、月払い方式と前払い方式で、入居期間による支払総額や返還額が変わると説明している。前払金の内訳や返還方法は契約によって異なるため、母の場合の料金プランを具体的に出してもらう必要がある。
入居時のお金は、次のように分けて書く。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 前払金・入居一時金 | 充当先、償却開始、償却期間、初期償却、返還計算 |
| 敷金 | 退去時に差し引かれる条件、原状回復の範囲 |
| 契約事務費など | 返還の有無、何に対する費用か |
| 引っ越し費用 | 荷物量、搬入時間、施設指定業者の有無 |
| 居室準備 | 家具、寝具、カーテン、家電、収納用品の持ち込み条件 |
| 医療・介護情報の準備 | 診断書、健康診断、文書料、検査の要否 |
前払金と敷金は、同じ最初の支払いでも役割が違う。「退去すれば戻る」と一括りにせず、契約書の名称と返還条件で確認する。
母は今すぐ入居する予定ではない。だからこそ、実際の見積書がない段階で相場の数字を家計へ入れない。候補施設から母の条件で書面を出してもらい、入居時、3か月後、1年後に退去した場合の返還額を尋ねたい。
毎月の固定費は、含まれるサービスまで書く
毎月の支払いは、家賃、管理費、食費だけでは終わらない。
管理費という名称でも、共用部分の維持費だけを指す場合と、生活支援の人件費を含む場合がある。水道光熱費も、管理費に含まれる施設、定額の施設、居室ごとの使用量で払う施設がある。
食費は、1日3食を30日利用した想定なのか。欠食届を出せば減額されるのか。体調不良や入院で食べない期間も請求されるのか。治療食や居室への配膳が別料金かも確認する。
月額欄は、金額と一緒に次の三つを書くと分かりやすい。
- 必ず払う費用か
- 利用した月だけ払う費用か
- 介護度や回数で変わる費用か
たとえば、家賃は原則として毎月続く。食費は利用状況で変わる可能性がある。介護保険サービスの自己負担は、介護度、負担割合、提供されるサービスで変わる。
「月額15万円」と「月額18万円」をそのまま比べるのではなく、同じ条件にそろえる。母の居室、食事回数、介護保険の負担割合、必要な支援を入れた一か月分の見積書を依頼する。
在宅介護にかかる月々のお金と比べる場合も、介護サービス費だけを比べない。在宅では食費、配食、交通、実家の水道光熱費が別々に出ていた。施設では名称がまとまるだけで、暮らしに必要なお金が消えるわけではない。
医療・日用品・付き添いは、月額の外に出やすい

月額表示から漏れやすいのは、本人ごとに使う量が違う費用である。
母の場合、今は毎日飲む処方薬はない。ただし、定期受診とストマ用品の管理は続いている。施設へ移っても、医療費や消耗品が一律に月額へ含まれるとは考えない。
確認したい費用を、暮らしの場面で分ける。
- 診察、薬、歯科、訪問診療などの医療費
- 通院の送迎、付き添い、待ち時間にかかる費用
- ストマ用品など、本人が継続して使う物
- おむつや衛生用品を施設指定で購入する場合の費用
- ティッシュ、洗剤、歯ブラシなどの日用品
- 衣類の洗濯、クリーニング、寝具交換
- 理美容
- 電話、テレビ、インターネット
- 行事、外出、個別の買い物代行
同じ項目でも、施設が用意する場合、本人が持ち込む場合、外部事業者と契約する場合がある。費用だけでなく、家族が買って届ける必要があるかを見る。
私は毎日施設へ通える距離にいるとは限らない。安い日用品でも、家族が勤務後に買い、届ける回数が増えれば、交通費と時間がかかる。施設内で購入できる物、購入代行の手数料、家族が用意する物を分けておきたい。
医療についても、「協力医療機関あり」で費用まで含まれるわけではない。訪問診療の契約、診察費、薬代、緊急搬送、家族の付き添いを別に確認する。個別の医療判断は、施設だけでなく本人の主治医や関係する医療職にも相談する。
介護度や体調が変わった後の費用を聞く
入居時の見積書だけで、数年分の負担を決めることはできない。
介護度が変わる。食事介助や排泄介助が増える。夜間の対応が必要になる。車いすや福祉用具を使う。医療的な支援が増える。居室を移る可能性もある。
そのとき、どの費用が変わるのかを契約前に聞く。
厚生労働省の介護付有料老人ホームの公表情報の読み方では、公表情報から確認する点が示されている。入居一時金、償却期間、返還金の計算、管理費、食費、光熱費、手厚い人員配置に伴う費用などである。
料金表で確認するのは、現在の金額だけではない。
- 介護度別の介護保険自己負担
- 介護保険外の個別サービス一覧
- 人員配置が手厚い場合の費用
- 居室変更や住み替えに伴う差額
- 長期入院中も続く費用、止まる費用
- 利用料を改定する場合のルール
- 医療対応が難しくなった場合の退去条件
「看取りまで対応」と説明されても、どの状態でも同じ居室、同じ費用で住めるとは限らない。できることと、別契約になること、住み替えや退去を相談する条件を分けて聞く。
将来の状態を正確に予測するためではない。負担が変わる場所を先に知り、家族の家計が急に立ち行かなくなるのを避けるためである。
施設費用と実家の費用が重なる期間を置く

母が施設へ移れば、実家の生活費がその日からゼロになるわけではない。
母は同じ敷地の離れで暮らし、母屋は空き家に近い。施設へ入居しても、電気、水道、保険、固定資産税、草刈り、建物の見回りが残る。離れの家財を整理し、契約を止めるにも順番がある。
施設入居後に実家をどうするかは別の記事で考える予定だが、費用表には最初から重なりを置いておきたい。
| 時期 | 施設側 | 実家側 | 家族側 |
|---|---|---|---|
| 入居前 | 申込、書類、前払金、居室準備 | 片付け、持ち物選び | 見学、契約、移動 |
| 入居月 | 月額、日用品、医療 | 電気・水道・保険などが継続 | 引っ越し、付き添い |
| 入居後数か月 | 通常月額、追加サービス | 契約見直し、見回り、草木管理 | 面会、補充、住所変更等 |
| 暮らしが落ち着いた後 | 介護度や体調で変動 | 維持・売却・処分を判断 | 定期連絡、家計確認 |
空き家に近い実家の固定資産税で考えたように、家を使わなくなったことと、税や管理の負担がなくなることは同じではない。
母の施設費用だけで家計を埋め、実家側を余りで払う形にはしない。少なくとも一定期間は二つの暮らしが並ぶ前提で、現金を残す。
一か月ではなく、一年の支払表へ移す
施設から料金表を受け取ったら、そのまま保管するだけでは比較しにくい。
私は、親の暮らしにかかるお金を年間で見える化した表と同じく、支払う時期まで一枚にしたい。
表は六つの枠に分ける。
| 枠 | 入れる費用 | 書き方 |
|---|---|---|
| 1 入居時 | 前払金、敷金、引っ越し、居室準備 | 支払日と返還条件を書く |
| 2 毎月固定 | 家賃、管理費、定額の水光熱費 | 必ず払う金額を書く |
| 3 毎月変動 | 食費、介護、医療、日用品 | 使った月の幅を残す |
| 4 年・季節 | 衣替え、保険、まとまった購入 | 発生する月を書く |
| 5 実家継続 | 税、保険、光熱、見回り、草木 | 止める時期を決める |
| 6 退去時 | 原状回復、荷物搬出、返還金 | 支払と戻るお金を分ける |
金額が分からない欄は、ゼロにしない。「未確認」と書き、誰へいつ聞くかを残す。
そのうえで、入居後の最初の一年に必要な現金を考える。母の収入は国民年金だけで、今の暮らしも蓄えの取り崩しと私からの仕送りで成り立っている。施設の費用はその上に乗る形になるため、不足分をどこから出すのかを先に決めておきたい。預金から出すのか、家族が補うのか。家族が補う場合、私自身の老後や生活費を崩さず続けられるかを見る。
六枠が埋まってくると、月額だけを見ていたときには気づかない偏りが見えてくる。支払いは入居月と、実家側の契約を止めるまでの期間に集まりやすい。
契約前に、三つの見積もりを出してもらう
施設費用を確認するとき、私は一つの標準例だけで決めない。
候補施設には、少なくとも三つの場面を尋ねたい。
- 母の現在の状態で、入居初月に必要な総額
- 通常の一か月に必要な総額
- 介護や医療の支援が増えた場合の一か月と、退去時の扱い
受け取るのは口頭の説明ではなく、金額の載った書面にする。見積書と個別サービスの料金一覧は、契約書類とは別に必ずもらう。口頭で「だいたいこのくらい」と聞いた金額は、確認済みの欄へ入れない。
重要事項説明書や契約書を見学当日に決めず持ち帰ることは、介護施設の見学で確認したいことで整理した。見学で聞いた職員体制や受診支援も、最後は費用と契約へつながる。できるかどうかだけでなく、月額内か、別料金か、家族対応かを聞く。
老人ホームの費用は、安い施設を探すだけの問題ではない。
本人に必要な暮らしを続けながら、家族が何年払えるかを見る作業である。月額表示を入口にはしても、結論にはしない。
まだ母の見積書は一枚もない。まず料金表を六つの枠へ移せる用紙を作り、見学時に未確認を残さない準備から始める。
定時のあとの時間を使って、少しずつ母の施設費用を家族の年間計画へ置き直していく。


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