英会話、三つの失敗を経て続けられるようになった話

人生後半

転職後、英会話を何度か試みた。ベルリッツ、名前を忘れかけた中規模のオンライン英会話、DMM英会話——それぞれに理由があってやめた。今はネイティブキャンプを使っている。英語はうまくならなかったが、続けることはできた。その記録を書いておく。

ベルリッツで完敗した

転職して少し落ち着いてから、英会話を始めようと思い立った。

選んだのはベルリッツだった。「英会話といえばここ」という老舗だ。1878年にアメリカで創業した語学学校で、日本では長く対面式のレッスンを提供してきた。様々な国籍の外国人講師が担当し、日本人スタッフが学習サポートとして相談にのってくれる体制が整っている。アクセスのいいビルの中に入っており、通いやすく快適な環境だった。

基本は1回2レッスンのセット、事前予約制だ。

3ヶ月通った。

そして完敗した。

レベルが高すぎた。最初のクラス分けで「初級」に振り分けられたが、それでも授業についていくのが精一杯だった。講師は外国人で、授業は英語で進む。聞こえてくる英語の意味が追えないまま、時間が過ぎていく。

「わかりません」を英語で言うのに詰まる、という場面が何度もあった。

料金は高い。3ヶ月通い続けて正直に思ったのは、「英語が話せるようになるまで続けたら破産する」ということだった。環境は整っていた。サポートも手厚かった。でも費用と自分の英語力の伸びを天秤にかけたとき、続ける判断ができなかった。

今振り返れば、ベルリッツは英語の基礎がある程度できているひとが、さらに伸ばすための場所だと思う。受験英語は一通りこなしたが、話したことはほぼないという状態には、入口として難しすぎた。

最初の選択肢を間違えた。

「質の高さ」は続ける理由にならなかった

しばらく期間が空いた。

転職後の仕事に追われ、英会話どころではない時期もあった。定時に帰れるようになったタイミングで、もう一度試してみようと思った。

次に選んだのは大手ではない、中規模のオンライン英会話サービスだった。大手と比べると料金は高め——同じような内容でも倍近い金額だったと思う。それでも選んだのは「先生の質」を売りにしていたからだ。

確かに先生の質は高かった。

講師は全員日本人で、授業の進め方が丁寧だった。こちらのレベルに合わせた対応をしてくれたと思う。

ただ、続けるうちに不満が出てきた。

人気の先生は予約が取りにくかった。時間帯によっては選べる先生が少なく、受けたいと思ったときに受けられないことがあった。

それ以上に気になったのは、融通の利かなさだ。

レッスンは必ず前日までに予約しなければならない。当日の急な変更やキャンセルは条件が厳しく、ペナルティが発生する仕組みだった。仕事の都合や突発的な予定変更に対応しにくい。

先生の質は間違いなく高かった。でも「学びたいと思ったその瞬間に受けられない」というストレスが、じわじわと積み重なった。

英語力の改善も、あまり実感できなかった。

今になって比較すると、英会話サービスを選ぶ基準は「先生の質を優先するか、利便性を優先するか」なのだと思う。どちらが正解ではない。ただ、自分の生活リズムと合わなければ続かない。そのことをここで学んだ。

DMM英会話で気づいた「2レッスンの呪い」

次に選んだのがDMM英会話だった。

国内最大手のオンライン英会話サービスのひとつで、フィリピンを中心とした非ネイティブ講師が多い。料金は手頃で、月額プランが豊富。口コミも多く、安心感があった。

最初は1日1レッスンのプランで始めた。

3ヶ月後、慣れてきたこともあり、1日2レッスンのプランに変更した。

これが失敗だった。

DMMのレッスン開始時間は00分か30分のみだ。連続して2レッスン受けようとすると、そのあいだに待ち時間が生まれる。その時間がもったいなく感じるようになった。

それ以上に辛かったのは、精神的なプレッシャーだ。

「1日2レッスン」という契約にしてしまうと、2レッスン受けないと損した気分になる。忙しい日、出張の日、疲れた夜——「今日は受けられなかった」という事実が積み重なっていく。

本来は英語を学ぶための手段のはずが、「2レッスンをこなすこと」が目的になっていた。

義務感と罪悪感。それが英会話に結びついてしまうと、続けることが苦痛になる。

3ヶ月ほどで、別のサービスを探し始めた。

ネイティブキャンプで初めて「続けられる」感覚が来た

調べているうちに、ネイティブキャンプという名前が出てきた。

最大の特徴は「1日何回でも受け放題」という点だ。月額定額で、レッスン回数に上限がない。

最初は半信半疑だった。DMM英会話での経験があったからだ。「たくさん受けることへのプレッシャー」がまた来るのではないかと思った。

実際に使い始めると、感覚が違った。

レッスンの開始時間が自由だった。00分・30分開始の「予約レッスン」もあるが、コインなしで受けられる「今すぐレッスン」は、受けたいと思ったそのタイミングで始められる。

受講時間も5分単位で選べる。25分にこだわらず、10分でも15分でも受けられる。

昼休みの残り時間に15分受ける。帰宅後の空いた時間に25分受ける。そういう使い方が、私の生活には合っていた。

「今日は10分だけ」という選択肢があることが、プレッシャーをなくしてくれた。

コインを使えばネイティブ講師も選べる。ただ私はそこまで費用をかけず、相性のいい先生を見つけて予約レッスンを取るという使い方に落ち着いた。

今は毎日、決まった時間に同じ先生と話している。

選んでいるのは同世代の日本人講師だ。ネイティブキャンプは様々な国の先生を選べるが、私は日本人講師を選ぶようにしている。理由は文法の解説をしてもらいたいからだ。会話の中でわからない部分があったとき、日本語でその場で説明してもらえると理解が深まる。英語で文法を説明されてもついていけない、という現実がある。

先生はこちらのレベルと話し方のクセを把握してくれている。毎回一から説明する必要がなく、先生がこちらに合わせて進めてくれる。それが続けられている理由の一つだと思う。

出張のときは受けられないこともある。でもそれで「損をした」とは思わなくなった。

英語はうまくならなかった。でも変わったことがある

正直に書く。

英会話を続けて、英語が話せるようになったかといえば、なっていない。

急に英語で話しかけられると頭が止まる。レッスン中でも、言いたいことが出てこないまま時間が過ぎることがある。

思えば、学生時代から英語を避けてきた。苦手意識があったというより、できるだけ向き合わないようにしてきた。それがこの年齢まで続いた。

その結果として、今になって悔しいと感じている。

若いころにもっとやっておけばよかった——そう思うことはある。でも今は「やっておけばよかった」より「今からやる」という気持ちの方が強い。現役のうちに、せめて会話ができるくらいにはなりたいと思っている。それが今の目標だ。

ただ、変わったことはある。

英語への抵抗感が薄れた。

以前は仕事のメールに英語が混じってくると、読む気が下がった。ざっくり言えば理解度10%くらいだったと思う。今は50%前後は意味をつかめる気がする。完全ではないが、確実に変わった。

それだけで、仕事上の小さなストレスが一つ減った。

もう一つ変わったのは「苦にならなくなった」ことだ。

途中で何度も挫折しそうになった。英語力の伸びが感じられない時期、忙しくてレッスンを続けられない時期、そもそもこれに意味があるのかと疑いたくなる時期——何度かあった。

それでも続けてきた結果、最近はレッスンを受けることが「義務」ではなくなってきた。

英語が話せるようになったかといえば、なっていない。ただ、何かを続ける根気だけは少しついたと思っている。

若いころより伸び率は遅い。それはしかたない。でも前に進んでいるだけでもいいと、今は思えている。

英会話サービスを選ぶなら、何を基準にするか

私が試した範囲での話だが、整理しておく。

ベルリッツは歴史あるプレミアムスクールで、環境・サポート体制ともに充実している。外国人講師による対面レッスンで、日本人スタッフの学習サポートもある。ただし料金は高く、英語の基礎がある程度できている前提の授業が多い。ゼロに近い状態から始めると、難易度と費用の両面で続けにくい。

DMM英会話は手軽さとコストのバランスがいい。ただしレッスン開始時間が固定されているため、生活リズムによっては窮屈に感じる。1日1レッスンプランを「受けられたらラッキー」程度の気持ちで使うのが向いているかもしれない。

ネイティブキャンプは時間の自由度が最も高かった。受け放題の仕組みでありながら、「受けなければ損」という感覚になりにくい設計が自分には合っていた。細切れの時間を使いたい会社員に向いていると思う。

どのサービスが優れているかではなく、自分の生活リズムとプレッシャー耐性に合うものを選ぶことが、続けるための条件だと今は思っている。

定時のあとの時間を使い、少しずつ。

現役のうちに会話ができるようになりたい。それが今の目標だ。

間に合わなかったとしても、英語を続けてきた時間が後の人生にマイナスに働くとは思えない。むしろ何かを続けたという事実が、定年後の自分の支えになるのではないかと思っている。

続けようと思っている。それだけは確かだ。

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