親のお金を家族が管理する前に確認したこと

親のお金を家族が管理する前に確認したこと お金

母が急に入院したとき、私は通帳や印鑑、保険証書の場所が分からず慌てた。

それ以来、親のお金は元気なうちに家族が把握したほうがよいと考えていた。

ただ、調べるほど、把握することと管理することは別だと分かった。

家族だからといって、親の口座を自由に動かせるわけではない。

先に必要なのは、通帳を預かることではなく、本人の希望と手伝う範囲の確認だった。

我が家で何から話せばよいか、順番を整理する。

通帳の場所を知ることと、管理することは違った

母が保管する通帳と届出印の候補を、家族が手を出さずに一緒に確認する様子

入院中の母に代わって必要な物を探した経験から、私は保管場所を知りたいと思った。

しかし、通帳の場所を共有してもらうことは、残高を見たり出金したりする許可とは違う。

暗証番号を聞けば安心できる、とも思わなかった。

紛失や第三者への漏えいが起きれば、母の生活を守るための準備が逆効果になる。

そこで、確認する内容を三つに分けた。

確認すること目的共有しないもの
通帳や重要書類の保管場所入院などの緊急時に探せるようにする暗証番号
年金や固定費の入出金先支払いの全体像をつかむ口座番号の一覧を家の外へ持ち出さない
困ったときの連絡先銀行や専門家へ相談できるようにする本人の同意がない取引情報

場所を知るのは、緊急時の捜し物を減らすためである。

お金を動かすのは、別の判断として扱う。

この線を引くだけで、母にも「全部見せて」と迫らずに済む。

ただ、保管場所が分かっても、そこで止まることがある。

母の通帳には、どの印鑑を届け出たのかまでは残っていなかった。

最近の通帳は、届出印の印影が分かる形になっていないものがある。

母に聞いても、これで間違いないという確証は得られなかった。

家にある印鑑を順に押して確かめる方法は取らない。

印影が合っているかは、名義人が窓口で確かめる手続きになる。

家族が代わりに済ませられないので、母と一緒に行く日を決めることにした。

入院のときに保管場所で困った話は、親が元気なうちに話しておくべきことにも書いた。

今回分かったのは、その先である。

場所を知っていても、本人がいなければ確かめられないものが残る。

最初に確認するのは本人が続けたいこと

母にお金の話をすると、「大丈夫」と返ってくることがある。

私はその一言を、準備が要らないという意味に決めつけないようにしている。

反対に、判断できないという意味にも取らない。

母は今も、自分でできる家事や身の回りのことを続けている。

お金についても、本人が続けたいことを先に聞く必要がある。

我が家なら、次のような聞き方が合いそうだ。

  • 今までどおり自分で払いたいものは何か
  • 引き落としになっているものは何か
  • 入院したときだけ頼みたいことは何か
  • 支払いが難しくなったら、最初に誰へ相談したいか
  • 家族に見せたくないものは何か

「口座を管理させて」では、話が大きすぎる。

「入院中の電気代だけ確認してよいか」なら、母も考えやすくなる。

本人が選べる大きさまで話を小さくすることが、最初の確認だった。

残高より先にお金の流れを見る

母と息子が年間の入出金書類を月ごとに整理する様子

親のお金を心配すると、私は預金残高を知りたくなる。

けれども、残高だけでは、来月の生活が回るかは分からない。

これは家族の側だけの話ではない。

母も通帳の数字は見ているが、それが何か月分の暮らしにあたるかまでは結びついていない。

買い物のたびに値段の高さには驚くので、物価が変わったことは感じている。

ただ、その驚きと残高が一本の線でつながる場面は、これまでなかった。

本人の感覚では、まだ余裕がある側に見えているのかもしれない。

会社勤めをせずに来た母には、収入と支出を並べて見る機会がなかったのだと思う。

私も税や社会保険を勤め先任せにしてきたので、母だけの話にはできない。

だから、数字を見せて分かってもらうことを入口にはしない。

説明より先に、支払いが止まらない形を作るほうが確実だと考えている。

先に見たいのは、年金が入る時期と、毎月・毎年の支払いである。

我が家では、母の暮らしにかかるお金を年間で並べたことがある。

税金や保険料など、月ごとに見ると抜けやすい支出が見つかった。

その整理は、親の暮らしにかかるお金を年間で見える化した話にまとめている。

一覧に必要なのは、まず次の項目である。

項目確認する内容
収入年金などが入る月
固定費電気、通信、保険などの支払方法
年払い税金や保険料などの時期
変動費食費、医療費、介護の利用料など
家族の負担誰が何を立て替えているか

ここにも、暗証番号は書かない。

残高も、母が共有してよいと決めた範囲だけにする。

年間の流れが見えると、今すぐ家族が管理すべきかも考えやすくなる。

一覧は一度で完成させようとしない。

今月届いた請求書を一つ置き、次に同じ種類の書類が届いたら追記する。

母が説明に疲れたら、その日はそこで止める。

確認を急がないことも、本人の選択を残すためのルールにしている。

見守る・手伝う・代わるの三段階に分ける

家族がお金に関わる方法は、管理するか、何もしないかの二択ではない。

私は「見守る」「手伝う」「代わる」の三段階に分けた。

段階家族がすること本人がすること
見守る支払日や書類の置き場所を一緒に確認する支払いと判断を続ける
手伝う本人の前で書類を整理し、問い合わせを補助する内容を確認して決める
代わる正式な権限や制度に基づいて手続きする可能な範囲で希望を伝える

母が自分でできる間は、見守る段階を急いで飛ばす必要はない。

文字が読みづらいときだけ、請求書を一緒に読むこともできる。

電話が負担なら、母のそばで問い合わせ内容をメモする方法もある。

一方で、本人の名義を使って家族だけで手続きを進めるのは別である。

「代わる」段階には、銀行の代理人制度や成年後見などの確認が必要になる。

小さな手伝いを分けておくと、必要以上に母の判断を奪わずに済む。

手伝う範囲を一枚のルールにする

口頭だけの約束は、家族の記憶が違ったときに困る。

私は、お金の一覧とは別に、手伝い方を一枚に残すのがよいと考えた。

書くのは、次の六つである。

  1. 何のために手伝うか
  2. どの支払いまで手伝うか
  3. 誰が確認するか
  4. 領収書や記録をどこへ残すか
  5. いつ本人と見直すか
  6. 本人が嫌だと言ったとき、どう止めるか

この一枚は、家族が権限を持つための委任状ではない。

その時点で、母と何を確認したかを忘れないためのメモである。

母が内容を変えたいと言えば、古い紙へ日付を付け、新しい内容に直す。

家族だけが読める場所へ隠すのではなく、母も見られる場所に置く。

見直す合図も、先に決めておく。

見直す合図話し直すこと
入院や退院があった一時的に手伝う支払いと終了日
引き落としができなかった原因の確認と、次回の確認方法
介護サービスが増えた新しい支払先と書類の保管場所
母が負担を感じた家族が関わる範囲を狭められるか

一度同意をもらったら、ずっと同じ範囲を手伝えるとは考えない。

母の体調だけでなく、家族の仕事や暮らしも変わる。

続けられない方法を約束すると、支払いが途切れる原因になる。

誰か一人しか分からない状態を避けるため、連絡先と記録の場所も残す。

ただし、記録を見る人は必要な家族に限る。

親のお金の準備と、親の情報を広く共有することは同じではない。

例えば「入院中の公共料金を確認する」と目的を限定する。

家族が立て替えたら、日付、目的、金額、領収書の有無を記録する。

少額でも記録するのは、親を疑うためではない。

後から「誰のお金だったか」で家族が迷わないためである。

家族側の生活費との境目も必要になる。

我が家では、母の暮らしに関わる引き落としを、私の口座から母の口座へ切り替えた。

私の口座のままにしておく方が、手続きは楽だった。

ただ、それでは誰の暮らしにかかった費用かが、帳面の上で混ざってしまう。

母の生活費が母の口座から出ていれば、後から見直すときに分けやすい。

私自身、親を支えるお金を家計の外に置いたまま考えないようにした。

その過程は、お金に縁遠く暮らしてきた私が家族の資金を見直した話にも書いている。

家族だからと親の口座を自由に動かさない

銀行窓口で母本人が通帳と印鑑について相談し、息子が後ろで見守る様子

全国銀行協会は、本人以外が預金を引き出す場合、本人の意思確認が原則だと案内している。

家族であることだけを理由に、自由に引き出せるわけではない。

本人の意思確認が難しく、生活費や入院費などが必要な場合は、まず銀行へ相談する。

取扱いは銀行や状況で異なるため、自己判断で暗証番号を使わないことが大切である。

銀行によっては、代理人の届出や独自の支援制度がある。

本人が元気なうちに、利用している銀行へ次を聞いておきたい。

  • 代理人を届け出る制度があるか
  • 入院中の手続きに何が必要か
  • 本人が窓口へ行けない場合、どこへ相談するか
  • 本人の意思確認が難しくなった場合の窓口はどこか

根拠は、全国銀行協会の認知判断能力が低下した顧客の預金取引に関する考え方本人以外による預金の引出しへの案内で確認した。

まず取引銀行へ相談するという順番を、家族で共有しておく。

家族の手伝いで足りないときに制度を考える

日常の見守りだけで足りる間から、すべての制度を急いで使う必要はない。

ただし、将来の代理人を自分で決めたいなら、本人に十分な判断力がある間の準備が必要になる。

任意後見は、本人が任せる人と事務の範囲を公正証書の契約で決める制度である。

契約しただけでは始まらず、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して効力が生じる。

詳しくは、法務省の任意後見制度の質問と回答で確認できる。

一方、特定の財産を将来どう管理するかが課題なら、家族信託が候補になる場合もある。

家族信託の仕組みと注意点は、親の口座凍結に備える家族信託の整理へ分けた。

死亡後の口座手続きは、生前の管理とはまた別である。

親が亡くなったあとのお金と口座の手続きも、同じ表へ混ぜないようにする。

制度を先に決めるのではなく、困りごとを分けてから相談先を選ぶ。

それでも判断が難しくなった先の備えは、別に知っておきたい。成年後見制度と家族信託の違いを調べたでは、二つの制度の役割の違いを調べた。

預かるより先に、母と窓口へ行く日を決める

我が家で今すぐ必要なのは、母のお金をすべて預かることではない。

先に決めたのは、母と一緒に銀行の窓口へ行く日である。

通帳と印鑑の組み合わせが分からないままでは、必要になった日に手続きが止まる。

そして、その確認は母が自分で本人確認を受けられる間にしかできない。

同じ日に、年金が入る口座と、そこから支払われる固定費も一緒に確かめる。

次に、入院したときだけ手伝ってほしい支払いを一つ選ぶ。

確認した内容は、暗証番号を除いて一枚に残す。

母が自分で続けたいことは、そのまま残す。

状況が変わったら、見守りから手伝いへ進むかを話し直す。

親のお金を守る準備は、家族が管理権を取ることではない。

本人が選べるうちに、誰が、何を、どこまで手伝うかを小さく決めることである。

窓口の予約が取れたら、その日はその確認だけで終わりにする。

母が疲れない一日にすることも、準備のうちだと思っている。

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