施設を考える前に、家で増やせる支援を考える

施設を考える前に、家で増やせる支援を考える 親の老い

母の一人暮らしを見ていると、いつか施設を考える日が来るのだろうと思う。

ただ、家での暮らしが難しくなった日に、行き先が施設だけとは限らない。今の母の生活も、本人の力だけで成り立っているわけではない。昼食の配食、買い物のヘルパー、私の訪問や通院付き添いが重なり、実家の離れで暮らせている。

足りない支援が出てきたとき、施設を探す前に、家で増やせるものはまだあるかもしれない。

今回は施設の種類や費用ではなく、家の中、家の外、医療、家族が動けない日という場面ごとに、どんな支援を足せるのかを整理した。使える支援には月ごとの枠もあるため、何から足すかという順番まで含めて見ていく。

家族か施設かの二択にしない

親の暮らしが心配になると、考え方が両極端になりやすい。

家族がもっと通う。

それが難しければ、施設を考える。

私も以前は、その間にある選択肢を十分に見ていなかった。母が退院して実家へ戻ったあと、買い物も通院も書類も、自分が動けば何とかなると思っていた。

しかし、家族が動けることを前提にした暮らしは、支える側の仕事や体調が変わると急に弱くなる。反対に、家族が全部を担えないからといって、家で暮らせないと決まるわけでもない。

家の中へ来てもらう支援がある。昼間に外へ通う支援がある。短い期間だけ泊まる支援もある。福祉用具や住宅改修で、動作そのものを軽くできる場合もある。

厚生労働省の介護サービス情報公表システムを見ると、居宅サービスには訪問介護、訪問看護、通所介護、短期入所、福祉用具貸与など、役割の違う支援が並んでいる。

支援の名前を先に覚えても、どれが自分の家に必要かは決まらない。

今の暮らしのどこが不安定なのか。本人は何を続けたいのか。家族が動けないとき、どこに穴が開くのか。この三つを先に見た方が、足す支援を選びやすい。

困りごとを四つの場面に分ける

「一人暮らしが心配」という言葉だけでは、必要な支援を選びにくい。

母の場合も、食事、買い物、通院、ストマ用品、火の元、電話、書類と、気になることは一つではない。全部をまとめて考えると、家での暮らしそのものが無理に見えてしまう。

そこで、まずは困りごとを四つの場面に分けてみる。

場面確認すること支援を考える方向
家の中食事、入浴、掃除、洗濯、排泄、移動訪問介護、配食、福祉用具、住宅改修
家の外買い物、通院、外出、人との接点通所介護、移動支援、家族や地域の支援
医療・療養体調、医療処置、退院後の生活主治医への相談、訪問看護、訪問リハビリ
家族が動けない日出張、病気、休養、急な予定変更ショートステイ、代替の連絡先、サービスの組み合わせ

この表は、支援を決めるための答えではない。相談するときに、何が足りないかを伝えるための下書きである。

たとえば、買い物に困っているからといって、外出そのものをなくす必要はない。母の場合は店で品物を選ぶ時間に意味があり、頼む範囲を分けて続けている。その分け方は親の買い物支援を続けてわかったことに書いた。

入浴が不安でも、すぐ住まい全体を変えるとは限らない。手すりや入浴用具で動作を支えられるのか、見守りや介助が必要なのかを分けて考える。

同じ困りごとでも、足せる先は一つに決まらない。介護サービスを増やすタイミングでは見直しを考える時期を整理したが、この記事で見たいのは、その場面にどの支援を当てられるかという中身の方だ。

家の中には、訪問してもらう支援を足せる

重い洗濯物は訪問支援へ頼み、自分でできる家事を続ける高齢の母

母が最初に受け入れたのは、買い物のヘルパーだった。

訪問介護では、本人の状態やケアプランに応じて、食事、排泄、入浴などの身体介護や、掃除、洗濯、買い物、調理などの生活援助が行われる。何でも家事代行のように頼めるわけではなく、本人の日常生活に必要な範囲で使うサービスだ。

母は今、買い物だけを短い時間お願いしている。掃除やほかの家事は頼んでいない。それでも、私が行けない日の不足を補えるだけで、暮らしの弱い部分が一つ減った。

体調や療養上の心配がある場合には、訪問看護という支援もある。訪問看護は、主治医の指示に基づき、看護師などが自宅を訪問して療養上の世話や診療の補助を行うものだ。利用できる制度や内容は本人の病状や保険の扱いで変わるため、主治医やケアマネジャーへの確認が必要になる。

母が今すぐ訪問看護を必要としていると決めているわけではない。ただ、家族が医療的なことまで自分たちだけで判断しようとしないために、こうした支援があることは知っておきたい。

訪問してもらう支援のよいところは、本人の生活の場所を大きく変えずに、負担の大きい部分だけを補えることだと思う。

一方で、家に人が入ることへの抵抗はある。本人の納得、頼む範囲、曜日や時間、物の置き場所を一度に変えないことも大切になる。頼みごとをまとめて増やすより、抵抗の小さい一つに絞って始める方が続きやすい。

通う支援と短く泊まる支援もある

自宅から通所サービスの送迎車へ向かう高齢の母

家で増やす支援は、家の中に人を入れるものだけではない。

通所介護、いわゆるデイサービスでは、日帰りで食事や入浴、機能訓練などの支援を受けられる。事業所によって提供内容、利用時間、送迎、受け入れ体制は違う。

親にとっては、入浴や運動の支援だけでなく、家の外へ出て人と接する時間にもなる。家族にとっては、その時間に仕事や用事を進められる。ただし、人の多い場所が合うか、長い外出が負担にならないかは、本人の性格や体調を見なければならない。

短期入所生活介護、いわゆるショートステイは、短い期間だけ施設に泊まり、食事や入浴など日常生活の支援を受けるものだ。家族の病気、出張、冠婚葬祭だけでなく、介護する家族の負担を軽くする目的も示されている。

ショートステイを使うことは、すぐ施設入居を決めることとは違う。

家族が動けない日でも暮らしを止めないための選択肢になる。将来、泊まりの支援が必要になったとき、本人が初めての場所に強い不安を感じないよう、利用できる条件や地域の事業所を早めに聞いておく意味もあると思う。

ただし、空き状況や利用条件、本人に合う環境かどうかは地域や事業所で異なる。必要な日に必ず使えるとは限らないため、急なときだけ探すのではなく、ケアマネジャーと事前に相談しておく必要がある。

福祉用具と住まいの調整で、人手以外の支えを増やす

手すり・段差用スロープ・歩行器で移動しやすく整えた実家の玄関

支援を増やすというと、人が来る回数を増やすことばかり考えてしまう。

しかし、毎日の動作を難しくしている原因が家の段差や浴室、立ち上がりにくさなら、福祉用具や住宅改修が役立つ場合がある。

厚生労働省は、介護保険の福祉用具を、自宅で自立した日常生活を送ることを助けるものと位置づけている。手すり、スロープ、歩行器などの貸与対象があり、段差の解消や手すりの設置などは住宅改修の対象になる場合もある。福祉用具と住宅改修の案内では、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員への相談、住宅改修では施工前の申請が案内されている。

先に工事をしたり、自分たちだけで用具を買ったりする前に相談する方がよい。

本人の体格や動作に合わなければ、置いたことでかえって動きにくくなることも考えられる。今の家でどの動作が負担なのかを見てもらい、必要性と使い方を確かめたい。

母は母屋から平屋の離れへ生活の中心を移した。住む場所を小さくしたことで、寝室、台所、浴室の移動は短くなった。これは介護サービスを増やしたわけではないが、暮らしを続けるための大きな調整だった。

人が補うことと、住まいで補うことを分けずに考える。その方が、本人に残せる動作も見えやすい。

足せる支援には、月ごとの枠がある

ここまで支援を並べると、必要なものを全部足せるように見えてくる。

しかし、居宅サービスには要介護度ごとに一か月の利用限度額が決められている。厚生労働省の介護サービス情報公表システムのサービスにかかる利用料では、限度額の範囲内で利用した場合は一割(一定以上の所得がある場合は二割または三割)の自己負担で、限度額を超えた分は全額自己負担になると案内されている。

訪問介護、通所介護、短期入所、福祉用具貸与は、別々の財布から出るわけではない。一つの枠を分け合う形になる。金額の目安と月ごとの負担の見方は介護にかかるお金は月いくらかへ整理した。

母の区分は、認定を受けたときから変わっていない。必要が増えたときに使える枠にも限りがあると考えている。

枠があるなら、何から足すかを決めることになる。私は次の順で見たい。

  1. 転倒や火の元のように、事故につながりやすい場面か
  2. 食事や買い物のように、止まると翌日に響く場面か
  3. 人手ではなく、用具や住まいの調整で軽くできる場面か

三つ目を先に確認しておくと、枠を使わずに解決できる部分が残っていることがある。

ただし、枠の配分を家族だけで計算する必要はない。サービスの組み合わせはケアプランに沿って決まる。家族が伝えるのは金額ではなく、どの場面を先に支えたいかと、その理由だと思う。

枠が足りないと感じたときも、回数を削る以外の方法があるかもしれない。事業所や利用時間の見直し、介護保険以外の地域の支援を含めて、担当者へ確認したい。

家族が動けない日を基準に組み合わせる

家族が動けない雨の日に備えた配食・買い物・電話の支援

今の支援が足りているかは、家族が予定通り動ける日だけを見ても分からない。

私が実家へ行けない週に、母の食事や買い物がどうなるか。

急な通院が必要な日に、誰へ連絡するか。

私自身が体調を崩したとき、代わりに状況を知る人がいるか。

台風や猛暑で外出できない日に、どの支援が止まるか。

こうした日を一つ想定すると、暮らしの弱い場所が見える。

配食が休みの日には何を食べるか。ヘルパーが来られないとき、買い物は何日待てるか。電話がつながらないとき、訪問できる人はいるか。通院の送迎を家族以外へ頼めるか。

すべてに予備を用意することは難しい。それでも、一つの用事を一人だけに集めないようにすることはできる。

家族、訪問介護、配食、通所、短期入所、医療、福祉用具。どれか一つで完成させるのではなく、本人の暮らしに合わせて組み合わせる。

予定表を支援で埋めることが目標ではない。家族が動けない日でも暮らしが止まらない形にしておけば、通える日に何をするかも選びやすくなる。

家で足せることを確かめてから、住まいを考える

場面を分けて、枠の中で順番を考えても、家族だけで結論を出す必要はない。

相談の入口になるのは、担当のケアマネジャーか、親が住む市町村の地域包括支援センターだ。厚生労働省によると、地域包括支援センターは、市町村が設置し、高齢者の総合相談や介護予防、地域の支援体制づくりなどを担う機関である。

支援の名前を家族が当てにいく必要もない。地域包括支援センターに相談する前に整理したいことで書いたように、親の暮らし、家族が補っていること、本人の希望を一枚にしておけば、そこから使える支援を一緒に探せる。

家で増やせる支援を確かめても、在宅の生活が難しくなることはある。夜間の見守りや医療的な対応が必要になり、家だけでは本人と家族の安全を保ちにくくなる場合もある。

そのときは、住まいを含めて支援の形を変える段階になる。判断する日に比べる材料がないと選びにくいので、介護施設の種類と費用は先に見ておきたい。

家でできることを一つずつ確かめる。同時に、住まいを変える選択肢も知っておく。答えは親の状態、住む地域、家族の事情で変わるため、今の私にできるのは、母の暮らしで不安定になった場所を見つけ、必要な支援を早めに相談することだ。

定時のあとの時間を使って、少しずつ母が家で暮らし続けるための支えを整えていく。

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